山崎怜奈(やまざき れな)
1997年生まれ。乃木坂46の2期生としてデビュー。TOKYO FM『山崎怜奈の誰かに話したかったこと。』パーソナリティー、NHK Eテレ『NHK高校講座世界史探究』MC、読売テレビ『ウェークアップ』パートナーなど、多方面で活躍中。
光る君へ
今期のNHK大河ドラマ『光る君へ』が実におもしろい。もともと、小学校4年生の頃に見た『篤姫』(2008年期・宮﨑あおいさん主演)で日本史に興味が湧いてから、大河ドラマはずっとチェックしているのですが、今回はその題材にも、描かれ方にも惹き込まれて、毎週楽しみに見ています。
舞台は平安時代中期、『源氏物語』の作者、主人公・紫式部(吉高由里子さん)の生涯を綴った物語なのですが、当時の社会的背景も、説明的でなく自然に作劇に描かれている点が秀逸だと思っています。恋愛要素も盛り込まれているので、歴史に詳しくない人でも純粋にドラマ作品として楽しめるし、歴史や古典文学好きの人にとっては、深掘りすればするほど作品の見方が深まるような作りになっているんです。私は漫画『あさきゆめみし』(大和和紀さんによる『源氏物語』を漫画化した作品)や現代語訳で『源氏物語』に触れてきたのですが、その中のエピソードをオマージュした(と思われる)シーンが出てきたり、「わかる人にはわかる」伏線が張り巡らされていて、それを探っていくのも毎回楽しみ。
登場人物もそれぞれにキャラクターが立っていて飽きないのですが、『枕草子』好きの私としては、ファーストサマーウイカさん演じる清少納言に注目しています。女性のキャリア形成が難しい時代背景の中で、彼女は、「女性も然るべき教育を受けて、一度は出仕して世間の様子を学んだほうがいい」という考え方を持った人物。残した作品にも、そんな彼女の願いや宣戦布告(!)とも取れる言葉がたくさん残されています。
ドラマでも、そんな彼女の個性がセリフや所作にしっかり描かれていて、ファンとしてもうれしい限り。あえて空気を読まない強さもあり、なおかつワードセンスが見事な故に、切れ味抜群なんです。それを演じ切るウイカさんもすばらしい! 現在の女性にとっても、共感できる部分が多くあると思います。
男性だったら、ロバート・秋山竜次さん演じる藤原実資に注目してほしい。すごく優秀なんだけれど、ひと言多いキャラクター。彼が残した日記『小右記』は、当時の男性貴族が行なっていた政務や儀式が事細かに記されているだけでなく、いかに政権闘争に苦しめられていたのか、その人間模様も書き示されています。『源氏物語』『枕草子』『小右記』と、どの作品も様々な解釈での現代語訳や解説本が出ているので、そうした書籍で少し予習してドラマを見るとより理解が深まる気がします。私ももう一度登場人物が残した文学作品を読み返しながら、最後まで楽しみたいと思います。
my recommendation
実資が60年以上にわたり書き続けた日記
KADOKAWA/角川ソフィア文庫『小右記 ビギナーズ・クラシックス 日本の古典』
1980円 著/藤原実資 編/倉本一宏
平安時代の公家・藤原実資が日々の政務や出来事を漢文で綴った日記。藤原道長が詠んだとされる「此の世をば我世とぞ思ふ望月の欠けたる事も無しと思へば」が載っていることでも有名。
これだけ詳細な記録が残っているのは稀有なこと。この本でしか知り得ない当時の暮らしが詰まっています。
『源氏物語』が丸わかり!
エクスナレッジ『源氏物語 解剖図鑑』
1760円 著/佐藤晃子 イラスト/伊藤ハムスター
『源氏物語』全54帖を徹底解剖。当時の皇族・貴族の暮らし、風習、文化、信仰などについても詳しく紹介した一冊。各帖の代表的な絵巻などがイラスト化され、魅力が伝わる。凝猫化、凝犬化された登場人物も必見!
『源氏物語』の全体像をつかみたいならこちら! イラストとともにユーモラスに、とてもわかりやすく解説されています。
現代と変わらぬ感性に共感!
KADOKAWA/角川ソフィア文庫『枕草子 ビギナーズ・クラシックス 日本の古典』
748円 著/清少納言 編/角川書店
『源氏物語』に並ぶ王朝女性文学を代表する『枕草子』を、古文・現代語訳ともにふりがな付きで、古典初心者にもわかりやすい内容に編集。清少納言自身の平安の宮廷生活での体験が綴られる。
数ある現代語訳の中でも特に読みやすい一冊。清少納言ならではの、はっきりとした物言いが堪能できます。
撮影/タナカヨシトモ ヘアメイク/久保フユミ スタイリング/マルコマキ 構成/坂本祥子