2. 無許諾の二次創作はどこまでOK?どこからが違法?
二次創作の多くは、オリジナルに自分なりのアレンジを加えて制作されているため、主に「翻案権」の侵害に当たるかどうかが問題となります。
翻案権侵害に当たるかどうかは、「直接感得性」の基準などによって判断されます。
2-1. 「直接感得性」の基準
無許可での二次創作が翻案権侵害に当たるのは、二次創作物からオリジナルの表現上の本質的な特徴を直接感得できる場合です(最高裁平成13年6月28日判決)。
簡単に言えば、二次創作物をぱっと見たり聴いたりした際に「オリジナルと似ている」「オリジナルをベースにしている」とすぐ分かるような場合には、翻案に当たるため著作権者の許諾を要する可能性が高いと考えられます。
たとえば、他人のキャラクターを登場させた二次創作漫画や、他人の音楽の主要な部分をアレンジした二次創作音楽を無許諾で制作した場合は、原則として翻案権侵害に当たります。
実際には、このような無許諾の二次創作は黙認されているケースも多いところですが、著作権者に違法性を指摘される可能性がある点には留意しておきましょう。
2-2. 私的使用目的であれば許諾不要|ただし範囲は厳しく限定されている
著作物の翻案は原則として著作権者の許諾を要しますが、私的使用目的である場合には、一部の例外を除いて著作権者の許諾が不要とされています(著作権法30条1項、47条の6第1項第1号)。
「私的使用」とは、個人的にまたは家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用することをいいます。
たとえば自分だけで楽しむ場合や、家族やごく少数の親しい友人に見せるだけの場合は私的使用に当たるため、二次創作に当たって著作権者の許諾は不要です。
ただし、会社内における検討資料として配布するなど、団体において業務上利用することを目的とした二次創作は私的使用に当たらないと解されています。
また、友人内で共有するだけの場合も、二次創作物を見せる人の範囲が広がれば広がるほど、私的使用に当たらず許諾を要すると判断される可能性が高まります。
私的使用を理由に二次創作の許可が不要となるケースは、厳しく限定されていることを理解しておきましょう。
2-3. 小説なら無許諾の二次創作もOK?
小説や漫画などのキャラクターや舞台設定を用いて、自分で考えたストーリーを展開する二次創作小説も、愛好家の間でよく製作されています。
二次創作小説は、漫画やイラストなどに比べると著作権侵害のリスクは低いと思われます。しかし実際には、無許諾の二次創作小説が著作権侵害に当たるかどうかはケースバイケースです。
キャラクターや舞台設定はアイデアに過ぎないので、それを無許諾で用いて小説を書いても、直ちに著作権侵害に当たるわけではありません(キャラクターの絵をアレンジして描いた場合などを除く)。
その一方で、ストーリーが原作と似通っている場合や、キャラクターの特徴的なセリフがそのまま転載されている場合などには原作の翻案に当たり、無許諾では著作権侵害に当たると判断される可能性もある点にご注意ください。
取材・文/阿部由羅(弁護士)
ゆら総合法律事務所・代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。ベンチャー企業のサポート・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。東京大学法学部卒業・東京大学法科大学院修了。趣味はオセロ(全国大会優勝経験あり)、囲碁、将棋。
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