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民法改正で新設された「法定養育費制度」とは?協議が調わなくてもスムーズに養育費を請求することが可能に

2024.09.05

2024年5月に成立した改正民法により、「法定養育費制度」が新設されました。改正民法は、2026年5月までに施行される予定です。

法定養育費制度を含む新制度の導入により、離婚後に子どもと一緒に暮らす側は、協議が調わなくても養育費を請求しやすくなります。

本記事では、改正民法によって新設される法定養育費制度のポイントを解説します。

1. 法定養育費制度とは

法定養育費制度とは、養育費を定めることなく協議離婚をした場合に、民法の規定に従い、離婚の日に遡って養育費を請求できる制度です(改正民法766条の3)。

従来は、養育費を受け取るためには相手との間で合意をするか、または調停・審判・訴訟などによって養育費の支払義務を確定させる必要がありました。

法定養育費制度が導入されれば、これらの手続きによって養育費の金額などが確定していなくても、民法の規定を根拠に養育費を請求できるようになります。

2. 法定養育費の請求方法

法定養育費制度に基づいて養育費を請求する際には、当事者間で話し合って任意に支払いを受けることが望ましいです。

話し合いがまとまらなければ、法的手続きを利用することになります。

従来は調停・審判・訴訟などを経る必要がありましたが、改正民法の施行後は、これらの手続きは必要ありません。養育費債権について新たに付与される「先取特権」に基づき、裁判所に対して直ちに強制執行を申し立てることができます(改正民法306条3号)。

強制執行の申立てに当たっては、養育費を定めずに協議離婚をしたことを証する文書(離婚協議書など)を裁判所に提出します(民事執行法193条1項)。また、差し押さえるべき相手の財産を特定することが必要です。

強制執行の対象となるのは、債務者の総財産です。したがって、差押え禁止とされているものを除き、あらゆる財産を差し押さえることができます。

養育費をスムーズに回収する観点からは、預貯金や給与債権を差し押さえるのが一般的です。給与債権は支給額の一部に限られるものの、将来受け取る分についても差押えが認められています(民事執行法151条の2)。

3. 相手の預貯金口座や勤務先などが分からないときは?

養育費を回収するために強制執行の申立てをしたくても、相手の預貯金口座や勤務先などが分からず困っている方がたくさんいらっしゃいます。

このような場合には、民事執行法に基づく「財産開示手続」や「第三者からの情報取得手続」を利用すれば、相手の預貯金口座や勤務先などを把握できることがあります。

財産開示手続では相手本人、第三者からの情報取得手続では登記所・市区町村・金融機関に対して、それぞれ相手の財産に関する情報の開示を求めることができます。

ただし、財産開示手続を利用するためには、執行力のある債務名義の正本を裁判所に提出しなければなりません。

具体的には、養育費を定めた確定判決・審判書・調停調書・強制執行認諾文言が記載された公正証書などが必要です。

なお改正法の施行後は、執行力のある債務名義の正本を有する債権者が養育費を請求したときは、原則として自動的に、財産開示手続と第三者からの情報取得手続の申立てをしたものとみなされます(改正民事執行法167条の17)。

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