「おかげさまで」は敬語として正しいのか、目上の人に使っても大丈夫か気になる方もいるのではないでしょうか。「おかげさまで」はお世話になった方に対して感謝の気持ちを伝える表現であり、正しい敬語です。本記事では、「おかげさまで」の意味や使い方などをご紹介します。
目次
「おかげさまで」は敬語?
「おかげさまで」とは、相手に感謝の気持ちを伝える言葉です。敬語表現であり、目上の人に使っても問題ありません。
ここでは、「おかげさまで」の意味や、ひらがなと漢字の違いなどを解説します。
■「おかげさまで」の意味
「おかげさまで」は、お世話になった方やなにかをしてくれた相手に対し、感謝の気持ちを表現するときに使う言葉です。「おかげさまで」を漢字にすると「お陰様」で、「陰」とは隠れて見えないものを指しています。
もともとは、仏教の教えが由来となっている言葉です。「おかげ」は陰に隠れて見えない存在である神仏を指し、その加護に対する感謝を表しています。その「おかげ」に敬称の「さま」をつけ、他者からの力添えや恩恵に対する感謝に対しても使われるようになりました。
参考:デジタル大辞泉
■「おかげさまで」は正しい敬語
「おかげさまで」は、上司や取引先など目上の人にも使える敬語表現です。「自分1人ではうまくできなかった」という謙遜のニュアンスがあり、相手からなんらかの行動や心遣いを受けたとき、へりくだって感謝を伝えることができます。
「おかげさまで」という言葉を使うだけで謙虚な姿勢を示すことができ、相手に与える印象も変わるでしょう。
クッション言葉として「おかげさまで」を文頭につければ、相手との良好なコミュニケーションを行うことができます。
■ひらがなと漢字の違い
「おかげさまで」は漢字で書くと「お陰様」「お蔭様」「御陰様」「御蔭様」などで、さまざまなパターンがあります。メールなど文書に書く場合には漢字でも問題ありませんが、「お陰様」を使うのが一般的です。
ビジネスメールでは「お陰様」を使い、同僚や友人など親しい間柄でやり取りする場合は「おかげさまで」を使うなど、場面によって使い分けるとよいでしょう。
「おかげさまで」の使い方・例文
「おかげさまで」を使うのは、大きく分けて次のような2つの場面です。
・直接感謝を伝える場合
・不特定多数に感謝を伝える場合
それぞれの使い方と例文をご紹介します。
■直接感謝を伝える場合
相手に直接お世話になったり指導を受けたりしたとき、感謝の気持ちを伝えるために「おかげさまで」を使います。
相手になにかをしてもらい、そのために物事が無事に完了できたときに使うことが多いでしょう。
ビジネスシーンでは、上司や先輩から指導・アドバイスを受けたり、同僚に仕事を手伝ってもらったりしたときなどが該当します。
文頭に「おかげさまで」をつけるだけで、感謝の気持ちと謙虚な姿勢が伝わります。そのため、ビジネスシーンでもよく使われている言葉です。
「先日はご指導をいただき、ありがとうございました。無事に商談を終えることができました」と伝えるだけでも感謝の気持ちは伝わりますが、「先日はご指導をいただき、ありがとうございました。おかげさまで無事に商談を終えることができました」とすれば、より深く相手への感謝の気持ちが伝わるでしょう。
(例文)
・おかげさまで、締め切りに間に合わせることができました
・おかげさまで、商談が無事に終了しました
・おかげさまで、前期よりも成果を上げることができました
・おかげさまで、思っていたよりも早く新しい仕事に慣れることができました
・おかげさまで、プロジェクトは成功に終わりました。お力添えに感謝します
■不特定多数に感謝を伝える場合
「おかげさまで」は、不特定多数の人に感謝の気持ちを伝えるときにも使われます。直接恩恵を受けたわけではないものの、達成したことに多くの人が関わっている場合は、「おかげさまで」を使うことで、間接的に感謝を伝えることができます。
たとえば、プロジェクトを進め、無事に完了したことをメンバーに伝える場合、「おかげさまでプロジェクトが無事完了しました」という使い方をします。
ここで使う「おかげさま」は、特定の人物を指すわけではありません。プロジェクトに関わったメンバー全員を指して使われます。
(例文)
・おかげさまで、勤続10年になりました
・おかげさまで、本年度の目標を達成することができました
・おかげさまで、業績が年々上昇しております
・おかげさまで、創業〇周年を迎えることができました
・おかげさまで、イベントは大盛況のうちに終えることができました
「おかげさまで」の言い換え表現
「おかげさまで」には、同じように相手からの支援や恩恵に対する感謝を表す言い換え表現があります。一緒に覚えておけば、シーンに応じて使い分けができるでしょう。
ここでは、「おかげさまで」の言い換え表現について、使う場面や例文をご紹介します。
■ありがたいことに
「ありがたいことに」は、「おかげさまで」と同じく文頭につけ、感謝の気持ちを伝える言葉です。主に、良好な状況について感謝する意味合いがあります。
不特定多数の人への感謝を表すニュアンスが強く、偶然起こった良いことに対して使われることも多い言葉です。
(例文)
・ありがたいことに、事業は好調に進んでいます
・ありがたいことに、売上を昨年以上に伸ばすことができました
・ありがたいことに、今年も多くの受注をとることができました
・ありがたいことに、多くのお客様からご支持をいただいております
・ありがたいことに、企画したイベントは好評をいただきました
■お力添え
お力添え(おちからぞえ)は、相手からの援助やアドバイスなど、サポートを受けたときに使います。「おかげさまで」のように文頭だけに使うという制約はなく、文中でも使える言葉です。
実際に支援してもらった相手だけでなく、受賞スピーチや挨拶など、不特定多数の人に感謝の気持ちを伝えるときにも使えます。
(例文)
・このたびはお力添えをいただき、誠にありがとうございました
・お力添えをいただきまして、無事に手続きを完了できました
・〇〇様のお力添えがあってこそ、このような成果を得られました
・私がこのような賞をいただけたのは、皆様のお力添えがあってこそであり、心から感謝しています
■おかげをもちまして
「おかげをもちまして」は「おかげさまで」と同じ意味合いで使います。文章では、「お陰をもちまして」と漢字にしても問題ありません。
「おかげさまで」よりも、フォーマルな印象にしたいときに使います。親しい間柄の人に使うと堅苦しい印象になるため、その場合は「おかげさまで」を使う方がよいでしょう。
(例文)
・おかげをもちまして、無事に会社を立ち上げることができました
・おかげをもちまして、正式に役員への就任が決まりました
・皆様のご尽力のおかげをもちまして、今年度の売上目標を達成できました
・ご指導のおかげをもちまして、昇進試験に合格することができました
■お引き立て
お引き立て(おひきたて)は、取引先や顧客など長年の関係性を築いている相手に対し、感謝の気持ちを伝える言葉です。
ただし、どのくらい長い付き合いがあったら使うという基準はありません。実際には初めての取引・利用でも、これから関係が継続する可能性がある場合には「お引き立て」を使って感謝の気持ちを表します。
会話で使うことは少なく、主にメールや手紙で使う言葉です。挨拶や、結びの言葉として使われることが多いでしょう。
(例文)
・今後とも変わらぬお引き立てをお願いいたします
・日頃より格別のお引き立てを賜り、誠にありがとうございます
・今日の弊社があるのは、皆様方のお引き立てがあってこそでございます
・今後とも変わらぬお引き立てを賜りますよう、よろしくお願い申し上げます
■ご支援
ご支援(ごしえん)は、相手のサポートに対し、接頭語の「ご」をつけて丁寧に感謝の気持ちを伝える言葉です。
物質的な援助や指導・アドバイスなど、具体的になんらかのサポートを受けたときに使われることが多いでしょう。
また、口頭よりもメールなど文書で使うことの方が多い言葉です。
(例文)
・このたびは、〇〇様より多大なるご支援をいただき、感謝しております
・ご支援いただいたおかげで、イベントを無事に成功させることができました
・〇〇様のご支援がなければ、これほどの成功には至らなかったと思われます
・まだまだ未熟者ではございますが、今後ともご支援ご鞭撻のほど、よろしくお願い申し上げます
■たまもの
「たまもの」は漢字で、「賜物」と書きます。恩恵や祝福として与えられたものや、あることの結果として現れた良い事柄・成果という意味です。「〜のたまもの」という使い方をします。
たとえば、「お力添えのたまもの」や「ご支援のたまもの」という使い方をして、相手のサポートに対して感謝を伝えることができます。
なお、本来「たまもの」は、社長や上司など立場が上の人が部下の成果や努力を褒めたり、感謝を伝えたりするときに使う言葉です。そのため、上司や目上の人に対して「この成果は皆さんの努力のたまものです」といった使い方をするのは失礼にあたります。
目上の人に使うときは、「たまものと存じます」というように、へりくだった表現を使いましょう。
(例文)
・これもひとえに、皆様のご支援とお力添えのたまものです。深く感謝申し上げます
・〇〇様のお引き立てのたまものに、感謝申し上げます
・弊社の事業がここまで拡大できたのは、貴社のご尽力のたまものと存じます。心よりお礼申し上げます
・彼が誰よりも早く昇進できたのは、これまでの苦労と努力のたまものといえるだろう