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最近よく聞く「インクルーシブ」とはどういう意味?覚えておきたい「ダイバーシティ」との違いと具体事例

2024.09.22

少子高齢化が進み、ダイバーシティ&インクルージョンの重要性が指摘される日本では、改めてインクルーシブについての理解が求められています。社会の多くのシーンで実践されつつあるインクルーシブとは何か、具体的な事例とともに理解しておきましょう。

インクルーシブの意味とは?

インクルーシブはダイバーシティの概念とともに、近年注目されている言葉です。まずは、語源や言葉の定義とともに、インクルーシブな社会の特徴を解説します。

■インクルーシブの語源と定義

インクルーシブは「全てを包括する」「包み込む」といった意味を持ちます。語源はラテン語の「inclusivus」で、中世ラテン語から中期フランス語の「inclusif」を経て、英語の「inclusive」となりました。この言葉は15世紀半ばに副詞として使われ始め、1600年頃からは形容詞としても用いられています。

近年では、インクルーシブは障害の有無、性別、性的指向、人種など、あらゆる特徴を有する人々を排除せず、包み込むという意味で使われています。

公平・平等な社会を目指すインクルーシブ社会の実現は、教育やビジネスの分野で特に重要視されており、多様性を尊重し、誰もが共生できる社会を目指す取り組みが進められています。 

■インクルーシブとダイバーシティの違い

インクルーシブと同じ文脈でよく使われる言葉に、ダイバーシティがあります。両者は混同されがちですが、実際には異なる概念です。

ダイバーシティはもともと『多様性』を意味しますが、障害の有無、性別、性的指向、人種など、人々の特性を認識・理解し、尊重する姿勢を表現する言葉として広まっています。一方、インクルーシブは多様性を排除せず、組織や社会に積極的に受け入れることで、一体感を持って関わり合う態度を指す言葉です。

例えば、企業が女性管理職を増やすのはダイバーシティの取り組みといえます。一方で、女性の意見を尊重し、意思決定に反映させることは、インクルーシブの実践といえるでしょう。

ダイバーシティが多様性を『認める』姿勢だとすれば、インクルーシブはその多様性を『生かす』ことです。

■インクルーシブな社会の特徴

インクルーシブな社会とは、あらゆる人が排除されることなく、平等に参加できる社会です。個人の属性にかかわらず、全ての人が尊重され、活躍の機会が与えられる社会として、日本を含め多くの国が理想としています。

例えば、バリアフリーの環境整備や多様な働き方の導入、差別やハラスメントのない職場づくりなどが、インクルーシブな社会の実現に必要とされています。こうした取り組みにより、誰もが安心して暮らし、自分らしく生きられる社会が実現できるでしょう。

インクルーシブが注目される背景と理由

グローバル人材

(出典) pixta.jp

日本でも、インクルーシブの概念が注目を集めるようになったのは、さまざまな要因があります。ここでは、インクルーシブが求められるようになった社会的な背景と、SDGsの広がりによる影響を押さえておきましょう。

■社会的な格差や差別の問題

インクルーシブの概念は、もともと不況や移民の増加などにより、さまざまな社会問題を抱えるヨーロッパで広まったといわれています。例えばフランスでは、移民や一部の人種が社会から排除されていた面があり、人種間の深刻な対立にも発展した歴史があります。

このような人種や立場の違いから発生する差別や、経済的な格差を是正し、平等な社会を目指すための姿勢として、インクルーシブの概念が注目されるに至りました。さらに差別の解消のみならず、インクルーシブは若年層の失業者や、障害者などへの福祉政策の理念としても、広がりを見せています。

日本においても、病気や障がいを持つ人の雇用機会の増進や、男女間の賃金格差の是正といった観点から、インクルーシブの考え方が知られるようになりました。

■SDGsの広がり

SDGs(持続可能な開発目標)の広がりは、インクルーシブの考え方が広まった要因の1つといえます。SDGsは、2015年に国連で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に基づき、貧困の撲滅や質の高い教育の提供、ジェンダー平等など、2030年までに達成すべき17の目標を掲げています。

これらの目標は、SDGsのスローガンである「誰一人取り残さない」という考え方を強調するものです。この理念は、インクルーシブな社会の実現とも密接に関連しています。SDGsの広がりとともに、日本においてもインクルーシブの概念が多くの層に受け入れられ始めています。

ビジネスシーンでも、人々の多様性を尊重し、多くの人を内包する職場環境を構築するため、さまざまな取り組みを始める企業が増えています。

インクルーシブの実践例

英会話

(出典) pixta.jp

教育現場やビジネスシーンにおける、インクルーシブの実践例を紹介します。教育現場では、障害のある子どもを含めた、全ての子どもたちが共に学ぶ、インクルーシブ教育が広がっている状況です。

企業経営の面でも多様な人材を受け入れ、インクルーシブな組織文化の醸成に、力を入れる動きが活発化しています。

■教育現場におけるインクルーシブ

インクルーシブ教育とは、障がいのある子どもを含めた全ての子どもたちが、同じ教室で共に学ぶことを目指す教育理念です。

従来の特別支援教育では、障がいのある子どもは、特別な学級で学ぶのが一般的でした。しかし、インクルーシブ教育では、一人一人の特性に合わせた支援を行いながら、皆が同じ場で学ぶ環境を大切にします。

例えば、聴覚に障がいのある子どもには、手話通訳や字幕付きの教材を用意します。一方、視覚に障がいのある子どもには、点字の教科書やデジタル教材を活用するなど、それぞれに必要な配慮をしながら教育するのが特徴です。

■企業経営とインクルーシブ

インクルーシブな文化を構築するために、障がいを持つ人や外国人など、多様な人材を受け入れる企業が増えています。特に女性リーダーの積極登用をはじめ、男女間落差のないインクルーシブな組織風土を醸成するため、さまざまな施策を打ち出す企業が目立ちます。

また、年齢や障がいの有無にかかわらず、使いやすいデザインの製品を生み出している組織も少なくありません。企業がインクルーシブに注力することは、社会的責任を果たすだけではなく、ビジネスチャンスの拡大にもつながるでしょう。

■街づくりとインクルーシブ

インクルーシブな街づくりのため、誰もが安心して暮らせる環境の整備に、力を入れる自治体も増えています。

例えば、近年増加傾向にあるインクルーシブ公園では、車椅子でも利用しやすいデザインの遊具や、点字ブロックなどが設置されています。バス停・公共施設のバリアフリー化や、子育て支援施設の設置などに、取り組む地域も目立ちます。

さらに、近年増加傾向にある訪日外国人のため、多言語対応の相談窓口を設置する自治体が増えているのも、インクルーシブの実践例といえるでしょう。

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