物価高が家計を直撃している昨今。生活者の購買行動・消費行動には、どのような変化が見られるのだろうか?
デロイト トーマツ グループはこのほど、消費者の価値観・マインド、購買行動の決定要因などを調査した2024年度「国内消費者意識・購買行動調査」を公開した。
本レポートは、2024年4月に全国20歳~79歳の男女5,000人を対象に行ったWEBアンケート「国内消費者意識・購買行動調査」から得た回答結果をもとにしている。調査結果全体を通じて、消費者の購買意欲は拡大の傾向にあるものの、物価高の影響による「コスパ」「メリハリ」「節約」を意識した価値観への変化がうかがえる。本レポートでは調査結果に対して、考察を行っている。
「この数年で変化した価値観」について、約3割が「コスパを意識するように」「節約と贅沢のメリハリをつけるように」と回答し、経済的側面に関するシビアさが強まる傾向
「この数年で変化した価値観」についての質問への結果として、約3割弱の人が「コストパフォーマンスを意識するようになった」「節約と贅沢のメリハリをつけるようになった」と回答している。
このことから、昨年に続き経済的側面に対してのシビアさは強い傾向にある。また、「節約志向が高まり、より低価格なものを購入するようになった」の回答は、世帯年収が少ないほど高い傾向にあり、昨年の調査結果と変化はないものの、高所得層(600-1,000万円・1,000万円以上)においても昨年調査(13.9%)よりも回答割合が増加(16.6%)していることから、全体的に昨年より節約志向の傾向が高まっている。
この結果から、企業は消費者の購買行動の変化を考慮したうえで、消費者需要を取り込む商品・サービス開発やマーケティング施策を検討する必要があると考えられる。
全カテゴリにおいて「消費金額が増えた/大幅に増えた」と回答した層が拡大し、中でも外向き消費である「外食」「旅行」における消費が活発化
昨年と比較し、全ての商品カテゴリー*1において「消費金額が増えた/大幅に増えた」の回答が拡大した。外向き消費の「外食」は15.1%(前年比2.3ポイント増)、「旅行」は14.5%(同2.1ポイント増)など、全ての年代で消費が活発化している。
一方、昨年に引き続き、消費金額の増減の理由として「物価高騰」が上位を占めており、特に「食料品」「日用品」などの生活必需品においては、相次ぐ値上げにより必要に迫られて消費金額が増加していると考えられる。また各カテゴリで1~3割は「消費金額が減った/大幅に減った」と回答していることから、消費を控える傾向は依然として続いている。
*1:昨年度調査と比較可能な全てのカテゴリ
サステナビリティへの取り組みに対する消費者の認知は年々上昇の傾向にあるが、「興味・関心がある」の回答は4割程度と横ばい
サステナビリティの言葉や、その意味の認知度は年々向上の傾向にあるものの、「興味・関心がある」の回答は約4割と横ばいとなった。興味・関心の回答を性別・世代別にみると、60~70代の女性、続いて60~70代の男性、40~50代の女性の順番で比較的多い傾向にある。
また商品購入時に「サステナビリティを意識して商品を選択している」の回答が、各商品カテゴリでわずかだが、増加している。一方で、前回同様に約7割が「サステナビリティを意識して商品を選択していない」と回答しており、その理由として、2割以上が「サステナビリティを意識した商品がわからない」と回答した。
コンシューマー企業のサステナビリティへの取り組みについて、約半数が「サステナビリティに取り組む企業を応援したいが、商品購入やサービス利用まで至らない」と回答
「サステナビリティに関して取り組みを行っている企業に対する意識」では、「サステナビリティに取り組む企業を応援したい」と63.6%の人が回答する一方で、実際にその企業の商品やサービス購入に至る人は14.6%となった。49%が「サステナビリティに取り組む企業を応援したいが、商品購入やサービス利用まで至らない」と回答し、昨年と大きな変化は見られなかった。
性別・年代別で見ると、女性の各世代では「応援したいと思い、その企業の商品購入やサービスを積極的に利用したい」の回答が増加傾向にある。特に女性の60~70代では、約2割が「応援し商品やサービスを利用する」と回答した。
「応援したいと思わない」「興味がない」理由の上位は、「役に立つと思わないから」「実態が伴わず上辺だけの取り組みに感じてしまうから」などサステナビリティへの取り組み自体への意義を感じられないことが挙げられる。
本レポートでは消費者が企業のサステナビリティの取り組みを食品ロス低減の値下げ、リサイクルBOXの設置といった店頭での具体策を見て評価する傾向も示された。企業は、消費者がサステナビリティの重要性や自社の取り組みに共感し、購買に至るまでの施策を検討する必要がある。
<調査概要>
調査日:2024年4月下旬
調査方法:インターネットを利用したパネル調査(47都道府県)
※総務省統計局2024年4月発行の人口データを元にウエイトバック値を反映
構成/こじへい