協同組合をDX化するインドネシアのスタートアップ
しかし、世界では「信用協同組合の口座は銀行に口座を持てない人が利用するもの」という根強い意識がある。
これもまた誤解を恐れずに書けば、信用協同組合とは農村部の自営業者が利用するもので、都市部のホワイトカラーが利用する銀行とは隔絶された金融機関なのだ。
先ごろシードラウンド資金調達を完了したインドネシアのスタートアップ『Djoin』は、バリ島以東の島嶼部の協同組合をDX化する事業を展開している。
Djoinのオフィスはバリ島にあるが、それよりも東の島々は決して豊かとは言えない地域。そうしたところにある協同組合を、都市銀行並みの使い勝手にしようという発想である。Djoinと提携する協同組合の組合員は、同社提供のスマホアプリを使ったオンラインバンキングができるようになる。預金管理、送金、光熱費の支払い、キャッシュレス決済サービスへの残高チャージもこのアプリでできるという。
管理システムに対するDX化も施されるため、組合員のリスト化や各種データに基づいた融資の可否決定も実施可能に。これにより、Djoinと提携する協同組合は平均で5割以上も不良債権を削減することに成功している。
日本の金融インフラの盤石さ
が、この状況を日本人が見ると「日本の金融インフラの盤石さ」に意識が向いてしまう。
都市銀行と同等かそれ以上の信頼を集める地域密着型金融機関に事欠かない日本は、やはり世界的に見て稀有な国と表現するべきだろう。これは明治大正の重鎮たちが、「地方の経済発展に金融機関は不可欠」ということをしっかり認識していた証拠でもある。
そして、現代日本で「金融テクノロジー事業」を展開しようと考えるなら、地方の金融機関の存在は絶対に無視できないのだ。
【参考】
よりよい銀行づくりのためのアンケート-一般社団法人全国銀行協会
Djoin
取材・文/澤田真一