ファン必見の『関電トンネル破砕帯見学ツアー』について担当者にお話を伺ってみた
長野県大町市に、開催のたび定員の5~8倍程度の応募があるバックヤードツアーがある。それが『関電トンネル破砕帯見学ツアー』だ。
『関電トンネル破砕帯見学ツアー』では、黒部ダムの建設工事において極めて困難だったとされる関電トンネル内の「破砕帯区間」を徒歩で見学することができる。
そもそも黒部ダムといえば、迫力満点の観光放水や展望台からの美しい眺め、四季折々の自然が感じられるアルペンクルーズなどでも有名なスポットだ。現在は観光地として栄えているが、日本最大級の規模を誇る水力発電専用ダムの建設は容易なものではなく、莫大な工費と人手、そして尊い犠牲により完成した歴史がある。
『関電トンネル破砕帯見学ツアー』は、一般の観光では見ることができないそんな歴史の裏側を目で見て、肌で感じることができる特別なツアーになっているのだ。
――『関電トンネル破砕帯見学ツアー』がはじまった背景を教えてください。
“世紀の大事業” といわれた「くろよん建設」(黒部ダム・黒部川第四発電所)は、1956年10月より、国内のあらゆる技術と知識を結集し、自然環境保護への深い配慮を第一に考えはじまりました。そして、7年の歳月と当時の金額で513億円の工事費用、延べ1,000万人もの人手により、1963年6月に完成しました。
立山黒部アルペンルート・黒部ダムの長野県側入り口に位置する大町市は、このくろよん建設により観光産業をはじめ地域経済が大きく発展し、黒部ダムと共に歩んできた街です。
そんな黒部ダム竣工50周年を迎える節目の年となる2013年を契機に、更なる黒部ダムの魅力づくりや訴求を高めるため、各種イベントや観光プロモーションを実施し、大町市の観光誘客に努めるとともに地域経済の活性化を図ることを目的とする「くろよん50周年記念事業実行委員会」が設立されました。
立山黒部アルペンルートとは、富山県と長野県を結ぶ世界有数の山岳観光ルートのことで、3,000m級の雄大な北アルプスの景色を楽しむことができます。6つの乗り物で簡単に行くことができる一方で、通過型観光となりやすい側面がありました。
そこで「くろよん50周年記念事業実行委員会」では、黒部ダムの新たな魅力発信事業として公募イベントを企画。一般の方は降り立つことのできない関電トンネル内を歩き、破砕帯から出る湧き水に実際に触れるなど貴重な体験ができる『破砕帯見学ツアー』をはじめました。
『破砕帯見学ツアー』は、関電トンネル電気バス(当初はトロリーバス)の運行終了後に特別な体験ができるツアーとして実施することで滞在に繋げ、市内の他の観光地や市街地に訪れながらより深く黒部ダムや大町市を楽しんでいただくことを目的としています。
「くろよん50周年記念事業実行委員会」は2014年に解散しておりますが、その活動のノウハウを継承し立山黒部アルペンルート・黒部ダムを中心とした観光情報を発信する連携組織として「大町市プロモーション委員会」が設立され、公募イベントも継続実施しています。
――『関電トンネル破砕帯見学ツアー』の1番の見どころはどこでしょうか?
通常は降り立つことのできない特別な場所である関電トンネル内の冷たい風、今も流れる破砕帯の湧き水に実際に触れることで「くろよん建設」の苦難を体感できることです。
――実際に参加されたお客さまからの反響を教えてください。
「通常はバスの車内からしか見ることのできない破砕帯をバスから降りて見ることが出来るので、溢れる水の勢い、迫力を感じることができ、よかったです。」
「黒部ダム建設に関して、ほぼ事前学習のない状態で参加しましたが、大変充実した時間でした。通常の観光ルートではほんの数秒で通り過ぎてしまうところを、じっくりと徒歩で体験でき、パイロットトンネルからいまだにこんこんと湧き出る水の湧水量と冷たさに驚愕しました。」
「小学5年の娘と参加しましたが、建設時の大変さを事前に学習していたら、日暮れやトンネル内の暗さで恐怖や衝撃が増長されて怖いと感じたかもしれません。純粋な興味だけで破砕帯というものをしっかり見学できたようです。事前情報無しで参加させて逆に良かったと感じた点でした。一方で大人は建設時の困難を思うと、今日の便利な生活は先人の苦難の上にあるのだと再認識しました。大変素晴らしい機会をありがとうございました。」
「普段はバスで通過する破砕帯をバスから降りて自ら気温や水温を感じることができて良かったです。工事の大変さもわかりましたし、通年で気温10度水温4度と知って地球規模の構造みたいなことを体感できて良かったです」
「通常では見学できない破砕帯をじっくり見学できたこと、また、事前のDVD視聴によるレクチャーがよかったです。水温4度、毎秒600Lというのは想像することが難しいですが、冷蔵庫で冷やしたお風呂の水が3杯分、猛烈な勢いでやってくる、という解説がわかりやすかったです。それだけ難工事であったことを直接水を触って体感的に理解できたことがよかったです。」
バックヤードツアーには、ここにしかない特別な体験がある
施設や観光地の裏側を体験できるバックヤードツアーについて紹介した。
美しい展示やエキサイティングなアクティビティなど “表側” はもちろん楽しいものだが、バックヤードでしか出会えない “裏側” をこの目で見て深堀りすることは、きっと代えがたい体験として残るだろう。この夏は大人も子供も「好き」や「楽しい」を極めるべく、ワクワクするようなバックヤードツアーを探しに行ってはいかがだろうか。
取材協力/一般社団法人 大町市観光協会
画像提供/大町市プロモーション委員会
信濃大町なび 長野県大町市公式観光サイト
関電トンネル破砕帯見学ツアー
黒部ダムオフィシャルサイト
取材・文/黒岩ヨシコ
編集/inox.