DIME MAGAZINE
古巣・清水、町田とスタッド・ランスの試合を演出した谷川氏の現役時代とは？
1980年に静岡市で生まれ、幼少期からサッカーに勤しんだ彼は、99年に清水エスパルスのアカデミーからトップチームに昇格した元Jリーガーだ。同期に17歳322日という日本代表最年少出場記録を持つ市川大祐（現清水トップコーチ）がいて、自身も年代別代表でのプレーを経験するなど、期待値は高かった。
「高卒で入った清水では99年から2001年途中まで過ごしましたが、リーグ戦は2試合の出場にとどまり、当時J2のヴァンフォーレ甲府にレンタル移籍。20試合にフル出場しました。2002年に清水に復帰したものの、苦境が続き、戦力外通告を受けることになりました。
そこで、一念発起して2003年にアメリカ独立リーグのニューハンプシャー・ファントムへ行ったんです。アメリカメジャーリーグサッカー（MLS）入りを目指しましたが、外国人枠の制限もあって叶わず、帰国して2004年に水戸に入りました。でもその年に2度目の戦力外通告を受け、引退を決断した。24歳の時でした」と谷川CMOは20年前の厳しかったプロ生活を述懐する。
17歳で日本代表デビューした清水・市川大祐コーチとは同期の間柄（本人提供）
24歳で引退後、法政大学を経て、ブリヂストンへ
その後、両親の助言もあって法政大学キャリアデザイン学部の社会人入試を受け合格。3年時のゼミでインターネットリサーチ会社・マクロミルの創業者である杉本哲哉氏のゼミを受けるチャンスに恵まれ、グローバルビジネスの世界で活躍したいという思いが強まったという。
そこで2009年に入社したのが世界最大手のタイヤメーカーのブリヂストン。就職活動も熱心にしたといい、5～6社から内定を得た中から同社に決めたのは「業界で世界ナンバーワンの企業に行きたい」と考えたから。ブリヂストンなら文句なしだった。
配属先はロシアやウズベキスタン、アゼルバイジャンなどCIS諸国（独立国家共同体）を担当するロシア事業部。駐在員ではなく、定期的に出張し、ディーラーなどを回ってタイヤの営業をするという形だった。
「ブリヂストンは僕がいた当時から売上は3兆円を超えていて、社員が14万人いました。それだけの大きな組織がどう成り立っているのかを実際に学ぶいい経験になりました。創業者の石橋正二郎さんが掲げた『最高の品質で社会に貢献』という社是もあり、それも僕の心に深く刻まれました。立ち返る場所がある組織というのは本当に強いし、社会の役に立てるんだと痛感しました。
ロシア事業部時代には大学生の頃から必死に学んでいた英語を駆使して価値観や文化の違う人たちと交流し、自分の見識も広がったし、幅も広がった。ビジネスマンとしての土台を築けたのかなと思います」と谷川CMOは神妙な面持ちで言う。
そして2015年にスマートフォンアプリなどを手掛けるグライダーアソシエイツに転職。自分で事業を作れるような人間になりたいと大学時代に出会った杉本氏に相談したところ「一緒にやろう」と声をかけてもらえたからだ。
「社員30～40人ほどの少数精鋭の会社で、職場環境は大きく変わりました。提携する400以上の媒体から自動的に記事をピックアップして紹介するキュレーションアプリ『Antenna（アンテナ）』が2014年10月にローンチされ、僕もその営業のために顧客のところを走り回り、毎週木曜日の全社会議のための資料作りや報告など忙しい日々でした。7年目には執行役員になり、経営メンバーの一員として会社全体をリードしていく経験もさせてもらいました。
清水の本拠地・IAIスタジアム日本平スタジアムで笑顔を見せる谷川氏（筆者撮影）
最新号
