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『捲土重来』には、一度失敗した後に力を盛り返し、全力で巻き返すという意味があります。読み方や由来、適切な使い方を知っている人は少ないのではないでしょうか?捲土重来の意味や使い方、ビジネスでの活用例を解説します。
捲土重来の意味と読み方
『捲土重来』は、中国の詩に由来する四字熟語です。日常会話の中ではあまり見聞きしない言葉ですが、意味を知っておくと、スピーチや座右の銘で活用できるでしょう。
■捲土重来の意味と読み方
捲土重来は、失敗や挫折を経験した者が再び立ち上がり、勢いをつけて巻き返すことを意味します。読み方は、『けんどちょうらい』または『けんどじゅうらい』です。
ビジネスの世界では、新規事業の失敗や競合他社との競争で一時的に劣勢に立たされた場合など、困難な状況からの復活を描写する際によく用いられます。
この言葉からは、失敗を糧として成長し、より強くなって再挑戦する姿勢が感じられるため、困難を乗り越える決意を示したいときに使用すると効果的です。
■捲土重来の成り立ち
捲土重来は、中国の詩人・杜牧(とぼく)の『烏江亭に題す』という詩に由来します。『捲土』は土煙が巻き上がること、『重来』は再び来ることです。
紀元前202年の中国では、項羽(こうう)の楚軍と劉邦(りゅうほう)の漢軍が天下を争う『垓下(がいか)の戦い』が起こりました。劉邦が勝利し、戦いに敗れた項羽は自決する道を選びます。
非業の最期を遂げた劉邦をしのび、杜牧が『巻土重来未可知(土煙を巻き上げる勢いで、項羽が盛り返していたなら、結果はどうなっていたか分からなかった)』と詠んだことから、捲土重来は『敗者が勢力を盛り返し、再起を図ること』を指すようになったのです。
捲土重来の使い方と例文
捲土重来は、ビジネスやスポーツといったさまざまな場面で使用されます。ここでは、捲土重来の使い方を具体例を挙げて解説します。
■捲土重来の使い方
捲土重来は、これからの再起を心に誓うポジティブな場面で使うのが一般的です。ビジネスシーンにおいては、一度失敗したプロジェクトを再び立ち上げる際や、競合他社に負けた市場シェアを取り戻そうとするときなどに使用できます。
以前の失敗から学び、より強い決意を持って臨む姿勢を表現できるため、再挑戦という言葉を使うよりも、相手にインパクトを与えられるでしょう。
スポーツ界においては、けがから復帰した選手の活躍や、降格したチームが再び昇格を果たしたときなどに使われます。
■捲土重来を使った例文
やや硬さの残る表現であり、話し言葉よりもビジネス文書やスピーチ原稿で使われるのが一般的です。『捲土重来を期す』や『捲土重来を果たす』というフレーズを覚えておきましょう。
【例文】
- 捲土重来を果たすために、マーケティング戦略を練り直している
- A氏は選挙に落選してしまったが、捲土重来を期して次の選挙戦の準備をしている
- 倒産寸前の企業が捲土重来を果たせたのは、社員が開発した新商品のおかげだ
これらの例文から、失敗や挫折を経験した後の力強い再起を表現する言葉であることが分かります。
捲土重来の関連用語
捲土重来の意味をより深く理解するために、関連する用語について解説します。似た意味を持つ言葉や反対の意味を持つ言葉、英語での表現を知ることで、捲土重来の使い方や適切な文脈がより明確になるでしょう。
■似た意味を持つ言葉
捲土重来と似た意味を持つ言葉には、『再起』『復活』『巻き返し』などがあります。これらは、失敗や挫折を経験した後に再び立ち上がり、成功を目指す意味合いがあります。
- 再起:悪い状態から立ち直り、再び活動をすること
- 復活:死んだもの・衰えていたものが生き返ること
- 巻き返し:不利な状況から態勢を立て直して挽回すること
四字熟語では、『起死回生(きしかいせい)』や『反転攻勢(はんてんこうせい)』が類語に当たります。起死回生は絶望的な状況から良い方向に立て直すこと、反転攻勢は劣勢から攻勢に転じることです。
■反対の意味を持つ言葉
捲土重来の反対の意味を持つ言葉には、以下のようなものが挙げられます。これらは、目標達成を諦めたり、困難に屈したりする状況を意味します。
- 挫折:目標に向かう途中で挫けること
- 敗北:戦いや競争に負けること
- 断念:仕方がないと諦めること
四字熟語では、一度つまずくと立ち直れないことを意味する『一蹶不振(いっけつふしん)』や、失敗や挫折から立ち上がれない状態を意味する『再起不能(さいきふのう)』が該当するでしょう。
■英語での表現
捲土重来の英語表現としては、『make a comeback(盛り返す・再起する・復活する)』や『regain strength back(強さを取り戻す)』『regain lost ground(巻き返しを図る・勢いを取り戻す)』などが挙げられます。
また、『rise from the ashes(灰の中から立ち上がる)』という表現も、捲土重来の意味に近いといえるでしょう。これは、死からよみがえる鳥『フェニックス(不死鳥)』の伝説に由来し、困難から再生する様子を表しています。
捲土重来を適切な場面で正しく使おう
捲土重来には、失敗や挫折を乗り越えて再起を図る意味があり、ビジネスシーンやスポーツ界で多く使用される傾向があります。意味と正しい使い方を理解することで、コミュニケーションの幅が大きく広がるでしょう。
ただし、話し言葉ではあまり見聞きしない硬い表現のため、使用する際は相手と場面を見極めなければなりません。ビジネスシーンにおいては、決意表明やスピーチ、ビジネス文書で使うのが望ましいといえます。
同じ言葉を多用すると、語彙力の乏しさを相手に示すことになるため、類似表現もチェックしておきましょう。
構成/編集部