2024年8月14日に岸田文雄首相が9月に行なわれる次期自民党総裁選への不出馬を表明したことを受け、有力候補と目される議員たちの動きが活発化。その一人である小林鷹之・前経済安全保障担当相が早くも推薦人20名を確保したと伝えられたほか、茂木敏充幹事長も出馬の意向を周囲に告げたと言われている。
そんな自民党総裁選の結果が国内金融市場に与える影響について、三井住友DSアセットマネジメント・チーフマーケットストラテジスト 市川雅浩 氏による最新リポートが到着しているので、概要をお伝えする。
岸田首相が総裁選不出馬、党内では有力候補の名前が複数あがるが票読みは難しい
岸田文雄首相は8月14日、9月の自民党総裁選への不出馬を表明した。
岸田首相は自民党派閥の政治資金問題を受け、派閥の解消や政治資金規正法の改正などに取り組み、政治の信頼回復を図ってきた。
ただ、世論の政権批判が強まり、内閣支持率が低迷するなかで、自民党内からも次期衆院選を見据えて首相交代論が出ていることから、総裁再選は難しいとの判断に至ったとみられる。
自民党総裁選は、9月20日から29日の間に投開票する規定となっているが、具体的な日程は選挙管理委員会が8月20日に決定する(図表1)。
岸田首相の不出馬表明を受け、総裁選をめぐる動きは今後活発になると思われ、すでに自民党内では、現職の党幹部や閣僚の名前が有力候補者としてあがっている(図表2)。
総裁選への立候補には20人の推薦人が必要だが、派閥が解消されたこともあり、票読みが難しい状況となっている。
■各候補の経済政策の見解は注目だが、市場に一定の配慮か、総裁選後は解散・総選挙も焦点
国内市場では、各有力候補者の経済政策に関する見解が注目されているが、とりわけ円相場や金融政策についての発言には敏感な反応が予想される。
河野太郎デジタル大臣、茂木敏充自民党幹事長は7月、日銀に利上げを求める発言をし(河野氏はのちに金融政策は日銀が決めることと釈明)、石破茂元幹事長は先週、日銀の追加利上げの是非は明言を避けたものの、適正な為替水準は「常識的に110円~140円と言われている」と述べた。
ただ、足元で円安は相当程度修正され、その過程で、株価も不安定な動きとなったことから、各候補者とも円相場や金融政策に関するコメントには一定の配慮がなされると思われる。
なお、三井住友DSアセットマネジメントは岸田首相が検討していた秋の経済対策は、次期総裁(新首相)が引き継ぐとみているが、新首相が新政権の基盤を固めるため、衆議院の解散・総選挙に踏み切った場合、経済対策が大型化することも想定される。
■総裁選後の政策運営が大幅に修正される可能性は低く、市場に政局不安が広がる恐れは小さい
新首相の政策方針は十分に見極める必要があるが、政策運営の基本的な枠組みが大きく変わる可能性は低いと思われ、少なくとも国内市場に政局不安が広がる恐れは小さいと考えられる。
市場にとって望ましいのは、日銀の独立性の尊重で、適切な金融政策の運営は、国内金融市場の安定につながる。また、資産運用立国を実現するための各種施策の継続も、株式市場の発展には欠かせないと考える。
円相場の安定には、本邦収支構造の変革が必要であり、具体的な施策としては、国際競争力を持つ国内産業の育成、エネルギーの輸入依存の低減、国内への直接投資および証券投資の呼び込みなどがあげられる。
このうち、資産運用立国や収支構造の変革は、実現までにかなりの時間を要し、簡単なことではないが、日本経済の中長期的・持続的な成長にとっても重要な施策と思われる。
構成/清水眞希