周期ゼミ大量発生
今年4月下旬から6月にかけて、米国の南東部から中西部地域は〝奇跡〟とも呼ばれる自然現象に沸いた。周期ゼミの2つの集団が同時に羽化を迎えたのだ。この現象が生じるのは1803年以来、実に221年ぶりとなる。
「1兆匹、数十億匹ともいわれますが、正直、誰も正確な発生数を断言できないのが現状です」と語るのは〝イケメン東大生昆虫ハンター〟として話題の牧田習さん。
周期ゼミは、マジシカダ属(魔法のセミの意)というグループに属する北米固有種で、13年周期で発生するセミ4種と、17年周期のセミ3種からなる。ダブル羽化を迎えたのは、ともに1種ずつ。
今回の現象が与える影響は?「木の汁を吸いますが木が枯れる心配はありませんし、バッタのような農作物への悪影響も少ない。むしろ死骸は栄養になります」
餌が増えたことで鳥の繁殖がうまくいくと唱える研究者もいる。
「成虫の寿命である1か月間、100dBともいわれる騒音などに耐えるだけです。ただ、米国人にとってセミは、日本人が考えるほど身近な昆虫ではありません。周期ゼミが発生する地域ではグッズを販売するなど、文化的なものとして捉える側面もあるようです」
今回の現象が次に起こるのは221年後。そのため世界中の研究者が色めき立つ。子供たちへの影響も無視できない。神秘的で驚くべき出来事に遭遇した次世代の活躍にも期待。
写真は17年周期で発生する周期ゼミ。日本で見かけるアブラゼミなどに比べて小ぶりで、大きさは3~4cmだが、ジェットエンジン音並みに鳴き声がうるさいとも。
2024年4~5月間の13年、17年ゼミ羽化マップ米国農務省森林局が発表した羽化予想マップ。赤い部分が17年ゼミ、青い部分が13年ゼミ、イリノイ州にある黄色い部分でダブル羽化が予想されている。
出典:USDA
取材・文・編集/渡辺和博