自走式カプセル内視鏡
日本人の約4人に1人が「がん」で亡くなっている。国立がん研究センターの統計では1981年から40年以上も日本人の死因第1位であり続け、2022年には約39万人が、がんで亡くなった。がんの死因別では3割を消化器系がんが占め、早期発見すれば恐れることはないものの、胃カメラを挿入する苦痛や、バリウム検査をする体への負担が耐えがたく、検査を避け発見が遅れる原因になる。また、「大腸カメラを肛門から挿入するのは恥ずかしい」という心理的な負担も早期発見の足かせになる。
これらの負担を軽減し、かぜ薬より一回りほど大きいカプセルを飲み込むだけで検査できる「自走式カプセル内視鏡」が、がん早期発見率の向上や治療に寄与するとして注目を集める。この仕組みや活用契機について、開発を手掛ける株式会社ミュー代表取締役で工学博士の大塚尚武さんが説明する。
「カプセル型をした内視鏡はすでに実用化された製品がありますが、カプセルを飲み込んだ後は、消化管の動き(蠕動)任せで、自由度が低い。一方、『自走式』であれば、診察したい部位まで自由に動き、検査時間の短縮が可能です。
将来的には食道から大腸までの全消化管検査を1時間で完了できると見込んでいます。動作には外から磁場を使って制御しますが使う磁場は弱いものなので、理論的にはペースメーカーを埋め込んでいる人でも検査可能です。カプセルが撮影する映像はリアルタイムで受信し、その場で患者と医師がコミュニケーションしながら画像を見ることもできます」
また、「検査コストは既存の内視鏡検査が約1万~2万円なのに対し、技術料込みで総額10万円、患者3割負担で約3万円となる試算。今後は、カプセルに投薬機能や組織採取機能の搭載を計画しており、映像検査だけでなく直接的ながん治療にも貢献したいと考えていますが、まずは3年後には胃検査の薬事承認を得る予定です。そのさらに2年後には全消化管検査の承認を得たいと考えています」(同前)
半導体技術等の進歩により、医療機器のマイクロ化が今後続くだろう。近い将来、消化管より極細な血管内を直接検査できる内視鏡や治療器具が開発されるかも?
自走式カプセル内視鏡と、カプセルを制御する検査装置
患者は麻酔をする必要が無く、カプセルを飲み込んだら横になり検査装置の中に入れば、医師や検査技師がカプセルを操作する。