乗馬を体験してみたい!と思ったら?
パリ五輪では実に92年ぶりのメダル獲得となった総合馬術団体競技。ベルサイユ宮殿をバックに、美しい馬が華麗に障害を飛越していく。風景の美しさと同時に、馬の臀部に刈り込まれた日の丸や、授与式で馬が嬉しそうにぴょんぴょん走っていた可愛い姿も、話題を呼んだ。
馬術メンバーの愛称は「初老JAPAN」。48歳の大岩義明さん、41歳の戸本一真さん、39歳の田中利幸さん、38歳の北島隆三さんに、監督の根本淳さんも47歳。年齢を重ねていたせいか、ジェントルマン振りが目立ち、英国アン王女からのメダル授与の時、日本選手団だけが脱帽していた姿がとても紳士的だと、Xで話題になっていた。
若くなくても楽しめるスポーツならば、ぜひやってみたい。そして、もっと乗馬競技を見て楽しみたい。今回は日本初の乗馬サイト「BURN CARAMAN(バーンキャラマン)」を運営している小湊由貴さんに、乗馬の見方や、初めての乗馬体験について教えてもらった。
乗馬競技の基本のキ
馬術とは基本的に障害馬術、馬場馬術、総合馬術と近代五種競技(障害飛越)の4つがあると言う。「それぞれ競技に違いがありますが、どれも人と馬とが一体となって競技を行うスポーツ、という点では同じです。
今回、92年ぶりのメダル獲得に沸きましたが、オリンピック競技としては1900年のパリ大会から行われており、たいへん古い競技のひとつです。1952年のヘルシンキ大会までは男性の、それも軍人のみが参加できる競技でした。
日本初の馬術競技金メダリストは、1932年ロサンゼルスオリンピックで馬術障害飛越競技に出場した、陸軍大佐の男爵の西竹一さん。硫黄島で戦死されたのは有名です。
現在では軍人以外の男性および女性も参加が認められ、男女が全く同じステージで戦う、オリンピックの唯一の競技でもあります。また、今回の日本人メダリストの愛称が“初老JAPAN”ですが、若い人から高齢の方まで、幅広い年齢層の選手が活躍している種目でもあります」と小湊さん。
今回の受賞者は、年齢が48歳と他の競技に比べて高齢ですが、40過ぎても乗馬はできると小湊さん。「私の知り合いの女性で70越えて乗馬をされている美人画家もいらっしゃいます。ただご本人の体型や基礎体力、注意すべき疾患などをお持ちの場合は騎乗できない場合もございます。一番初めは予約時に必ずクラブ側に相談してみて下さい」とアドバイスしてくれた。
競技の面白さを知ろう
今回メダルを獲得した障害競技について、ごく簡単に競技の内容や何に注目すべきなのかを、小湊さんに教えてもらおう。
「障害のルールは超シンプルにいうと、馬場内の障害物を
1,決められた順番通り飛越(ひえつ)し、
2.障害物を落とさず
3.速くゴールする
ということが大切で、減点方式で採点されます。
具体的には障害物の落下、不従順(馬の反抗)、規定タイムの超越などが減点対象となり、落馬や、経路違反(順番を間違える)、レースの中で45秒以上馬が言うことを聞かず反抗し続けるとなんとその場で失格となります」。
今回、授賞式の様子が可愛いと大評判だった馬たちだが、オリンピック競技に参加する馬についても聞いてみた。
「私もすべての情報を知っている訳ではないので、その筋の方がいらっしゃいましたら是非ご指摘頂きたいのですが……オリンピックの馬場馬術に出場する馬の平均年齢は、大体10歳か~16歳くらいと言われているようです。
今回銅入賞が確定した大岩義明さんのグラフトンストリート(MGH Grafton Street※注1)は2008年生まれなので16~17歳くらいですかね。馬がオリンピックレベルに達するまでには、通常5年から10年の調教期間が必要と言われており、高度な技術や動きを習得するのに大体8歳くらいまでに基礎を徹底する必要があるみたいです。
この期間中、馬は定期的なトレーニングと競技経験を積み重ね、技術と体力を向上させていきます。
ただ、銅メタル入賞後、大岩さんがグラフトンストリートに対して『感謝しかない。気をつけてイギリスに戻るんだぞ~ 一緒にやり切ったな。君はすごいパートナーだ。 たまに言うことを聞かないけど……帰ったら休養と人参が待ってるよ!』と、愛情たっぷりのコメントをしているのを見ると、どの馬もそうですが時折やんちゃしているみたいですね(笑)」(小湊さん)
競技では同じ様に馬を走らせているように見えて、実は乗り方から馬への指示の出し方まで、その人なりのやり方があるところも、競技の見どころのひとつ。人の指示と、それに応えようとする馬の姿を見るのが、競技の楽しみ方の一つだと小湊さんは教えてくれた。
「普通に走ることを並歩(なみあし)と言いますが。並足をスタートするにも鞭を使ったり、脚を使ったり、選手によって多種多様です。それぞれ違う乗り方をしているので、ぜひ楽しみながら見て欲しいです」と言う。