Q:夫婦2人世帯とおひとり様世帯では老後資金は変わりますか?
A:1人あたりで考えれば必要な金額はほぼ同じ。子どもがいるかどうかで差が出るかも?!
――おひとり様世帯では、必要額は変わりますか?
大竹:生活にかかる固定費という意味では夫婦2人世帯のほうが経済的ではありますが、1人あたりで考えれば1人世帯も夫婦2人世帯も生活に必要な金額というのは、さほど変わらないと思います。
おひとり様の場合、介護施設に入る費用などを見積もっておいた方がいいと思いますので、そのぶん、夫婦2人世帯より、ゆとりをもって備えたほうがいいと思いますが、2人世帯であっても、将来的にどちらかの介護が必要になったり、亡くなったりしたら、最終的には1人世帯になるわけです。
それに、女性の場合、平均寿命から考えても、やがて1人で暮らすようになる確率が高いですよね。それを考えると、現状がどうあれ、いずれはおひとり様になることも想定したうえで老後資金を備える必要があります。
むしろ、お子さんがいるか、いないか、という視点のほうが、老後資金を算出する上での影響は大きいかもしれません。
――それは、どういった意味でしょうか?
大竹:お子さんがいると、状況に合わせた選択肢が増えるからです。
例えば、お子さんがいると、介護が必要になったときに条件に合う介護施設を一緒に探してくれるかもしれませんし、場合によっては二世帯住宅にして一緒に暮らすという選択肢もあります。資金が限られていても、選択肢が増える分だけ解決策が増えますよね。
――社会的なセーフティネットを利用することはできないのでしょうか?
大竹:もちろんそれも選択肢のひとつです。ただ、今後さらに高齢者の人口割合が増えていくことを踏まえると、それに頼り切るのは少し危険だと感じます。その意味でも介護や病気になったときの選択肢を増やすために、老後資金はより多くあったほうがいいと思います。
Q:ミドルシニア世代が想定すべきライフイベントにはどんなものがありますか?
A:介護、退職&再就職、社会保険料の支払い、医療費の増加……etc.
――老後資金を試算するには、自身の老後のライフプランをしっかりと描くことが必要なんですね。50代以上のミドルシニア世代が、今後想定しておいてほうがいいライフイベントや支出などを教えてください。
大竹:まずは「親の介護」。そしていずれ訪れる「自身の介護」の資金を考えたいですね。また、「定年後の税金や社会保険料の支払い」や「医療費の増加」も考えておきたいポイントです。会社員の場合、現役時代は会社が各人の社会保険料を半額負担しているのですが、定年後は全額自分で支払わなければなりません。それに加えて、年齢を重ねていくほどに、病院へ通う頻度も増える可能性があります。
職種によっては、「定年退職をする以前に仕事を辞める可能性」も視野に入れたほうがいいと思います。私がこれまでご相談を受けたお客様の中には、更年期や体力の限界が原因で、定年前に仕事を辞めざるを得なかった方も少なくありませんでした。具体的には、夜勤のある看護師さんや、立ち仕事の美容師さんなどがいらっしゃいました。
‶人生100年時代〟を考えると、働けるうちは働く、というのがベターですし、これまでのお仕事を辞めた場合でも別の仕事で再就職するのが当たり前の時代になってくるはずです。そうした場合の「再就職したときの収入の変化」も視野にいれておいたほうがいいでしょう。
ほかにも、持ち家世帯なら、自宅をバリアフリーにしたり、劣化にともなう改修などの「リフォーム費用」が必要になります。「電化製品の交換費用」も必要ですし、人によっては「結婚したお子さんの住居購入費やお孫さんの教育費の補助」なども視野に入れて計算される方もいます。終活という意味では、もしお墓を新たに準備する必要がある場合は、その費用も必要になります。