『人生100年時代』——老後の生活のために、お金をいくら用意したらいいのでしょう。「老後2000万円問題」が話題になったのは5年前。漠然とした不安と、何か始めないといけない焦燥感に駆られるミドルシニア世代に向けて、老後に必要な資産の算出、準備の始め方を、ファイナンシャルプランナーの大竹のり子さんに伺いました。
大竹のり子
ファイナンシャルプランナー(CFP認定者・1級FP技能士)。2005年5月‶女性のためのお金の総合クリニック〟エフピーウーマンを設立。女性に向けてのお金の教養セミナーやマネーコンサルティングなどを行ない、「お金」を切り口にして女性の人生をサポートしている。
Q:老後に必要なお金はいくらあったらいいのでしょうか?
A:その人のライフプランによって異なります。
――2019年に金融庁が提示した「老後の生活のためには退職までに2000万円を準備しなければならない」という数値は話題になりました。あれから5年が経過しましたが、私たちは老後の生活のためにどのくらいのお金を準備しておいたらいいのでしょうか?
大竹のり子さん(以下、大竹):金融庁の出した数字は、金融審査会市場ワーキンググループの報告書がもとになっています。その報告書では、無職の高齢者夫婦世帯(夫65歳・妻60歳)の月々の実収入20万9198円に対して実支出を26万3718円として、毎月約5.5万円が不足。それが30年間続くと想定した場合、約2000万円を貯蓄などで備えなければならないという計算から出されたものでした。
総務省 家計調査年報(家計収支編)平成29年(2017年) 家計の概要より
しかし、老後に必要な金額は、人によって異なります。
例えば、実支出の内訳は「住居が賃貸で家賃を払っている世帯」と「ローンのない持ち家世帯」とでは大きく異なります。8万円の賃貸住宅に住んでいる世帯なら、26万円から8万円を引いた18万円が残りの生活費になりますが、ローンのない持ち家世帯であれば丸ごと26万円を生活費に使えるからです。
また、老後に必要となる生活費は、その人がどんなふうに暮らしたいかによっても変わってきます。「できるだけ支出を抑えてつましく暮らせればいい」という人と、「これまで忙しく働いてきたので、老後こそ旅行や趣味を楽しみたい」という人では、必要な生活費は大きく異なります。
このほか、美容院へ行く回数や、遠くに住んでいるお孫さんに会いに行くときの交通費の有無など、各人のおかれた環境や価値観によっても支出額は変わります。
しかし、最近の物価上昇や今後の年金事情を考えると2000万円という金額は決して大げさな金額ではなく、老後を安心して迎えるための‶最低ライン〟だと思ってよいのではないかと思います。