アスリートの勝負強さはどこからくるのか――。輝かしい活躍を見せるトップアスリートのヒーロー的なイメージに反して、その強さの秘密の一端には“腹黒さ”もあるという。
勝負強いアスリートは“腹黒い”?
開会式では物議も呼んだパリ五輪が幕を閉じたが、五輪は普段は観戦することのない競技や選手を目にする格好の機会でもある。選手たちのキャラクターもさまざまであることから、さながら“人間観察”の場にもなり得るのだろう。
英雄として称賛されることもあるトップアスリートたちだが、新たな研究は彼らのイメージダウンにも繋がりかねない研究結果を報告している。
英ノッティンガム・トレント大学の研究チームが今年5月に「Personality and Individual Differences」で発表した研究によれば、勝利のためにトップアスリートには“悪意”のある性格特性が必要であるというのである。
この“悪意”とは具体的には自己中心的、冷酷さ、操作的であることが含まれている。
社会的には望ましくない気質であるナルシシズム、マキャベリアニズム、サイコパシーの3つの人格特性の集合体はダークトライアドと呼ばれている。
ナルシシズムとは、自己誇大性、権利意識、優位性の認識、他者への優越感、独自性の感覚などを特徴としており、自己の利益を重視する傾向がある。
マキャベリアニズムとは、過度に操作的で抜け目なく打算的に行動したり思考したりし、行動計画を慎重に画策する“腹黒い”傾向がある。
サイコパシーとは、衝動的でスリルを求める行動に出る傾向が高く、他者に対する共感性のレベルが低い。
こうした3つの性格特性が混然一体となったダークトライアドのレベルが一般の人々に比べて、アスリートは高い傾向にあることがこれまでの研究からも報告されているのだ。
「社会的な場で悪意があると見なされる特定の性格特性は、パフォーマンススポーツに非常に関連しています」と主執筆者のジョセフ・スタンフォード氏は同大学のニュースリリースに話している。
「高いパフォーマンスを発揮できる環境は、優越感を持ち、勝利を追求することに容赦がなく、自分の成功のために他人に影響を与えることができるという強い信念を持つ人々を引き付けることが多いです」(スタンフォード氏)
研究チームは特に、ナルシシズム、マキャベリズム、サイコパシーからなるダークトライアドに注目し、これらの特性は一般の人々には否定的に受け止められているが、エリートスポーツのような高いパフォーマンスの環境では利点となる可能性があると解説している。
勝負強いトップアスリートに“腹黒い”側面があるかもしれないと知ればスポーツ観戦が微妙に感じられてくるかもしれないが、むしろゲームの駆け引きをもう一段深く理解して楽しむこともできそうだ。