AIの登場により、社会の構造や営みが大きく変わる可能性が指摘されている。AIの中でも膨大な過去データを「学び」、最新のアルゴリズムを使って猛スピードで「組合せ」を行う生成AIは、人間に代わって文章、画像、動画、音声などを生成するだけでなく、複雑な問題解決の「判断」まで担うようになってきた。
そんなAIの開発競争と株式市場をめぐる動きを考察したリポートが三井住友DSアセットマネジメント・チーフグローバルストラテジスト 白木久史 氏から届いているので概要を紹介していきたい。
AIoTで加速するAI革命
チャットGPTに代表される生成AIが、猛烈なスピードで進化しながら急速に浸透しつつある。
最新型のスマホやパソコンはもちろん、ビジネス文書の推敲や作成、車の自動運転、医師に代わって病変を発見する最新の検査機器など、ビジネスから娯楽、医療、最先端の研究など、あらゆる分野でAIがわたしたちに代わり知的な作業を行なうようになってきた。
あらゆるものがインターネットにつながることで、私たちの生活を便利にすることをIoT(Internet of Things、モノのインターネット)と呼ぶが、今はまさにAIoT(あらゆるものにAIが搭載される世界、AI of Things)の時代を迎えつつある、と言ってよさそうだ。
AIoTの進展による経済効果は、「AI革命」と呼ぶにふさわしい猛烈な伸びが期待されている。
Bloomberg Intelligenceの調査によれば、今後2032年にかけて生成AIの市場規模は年率約42%の成長が続くものと予想されている(図表1)。
72の法則(市場規模などが倍になる期間を求める簡易方法、1年間の成長率で72を割ることで求められる)でわかる通り、生成AI市場は2年もかからずに倍になる「倍々ゲーム」が当面続くことになるかもしれない。
■スマホ登場を上回るAI革命のインパクト
ちなみに、初代iPhoneが発売されたのは2007年6月29日だが、総務省によれば同年の世界のスマートフォン(スマホ)出荷台数は約1.2億台だった。
その後、スマホの出荷台数は急拡大して2016年には約14.7億台に達するが、この間の出荷台数の伸び率は年率約32.1%。そう考えると、生成AI市場の拡大はスマホ登場のインパクトをも上回る「爆速」で進むことが期待できそうだ。
こうしたAIの成長スピードや伸びしろを踏まえると、今後のAI関連株を投資対象として注目する場合、その「売買タイミング」よりも、投資アイディアに我慢強く「とどまり続けること」が重要なのかもしれない。