飲酒、薬物使用、ギャンブル、無駄遣い、これらをやめたくてもやめられない人はたくさんいる。実際に、現代人の8割が何かしらの依存を抱えていると言われているが、そこから抜け出せないのは、快楽物質ドーパミンが一因だとされている。
一方で、こうした脳の働きを逆利用すれば脱却できると、脳神経内科医として6万人以上の患者の治療にあたってきた山下あきこ氏は話す。同氏の著書『「やめられない」を「やめる」本』では、著者の診療経験から得た知見やエビデンスを元に「やめられないをやめる」テクニックをわかりやすく、診療事例を交えながら解説している。
依存とは、その対象のものを常に求める状態で、それがなくては身動きが取れない状態を指し、依存体質は依存傾向が強い人のことを言う。さらに、日常生活に支障をきたすほど何かに依存して、抜け出せない状態になっていることを「依存症」と言い、依存症は医療で治療するべき病となる。
覚えておきたいのは、依存は大きく3つのタイプに分かれるということ。
・人間関係に対する依存(共依存)……恋愛、親子、友人など
依存に治療が必要なのかの分かれ道は、日常生活に支障が出ているかどうか。依存体質の人の中には、自分の依存傾向に気づいていない場合もある。もちろん、気づいている人もいるが、それを自分だけではやめられないという状態だ。
依存の根本原因はストレスを快楽で打ち消そうとする脳の働きにあるということを根底に、様々なカウンセリング事例や科学的な根拠を織り交ぜながら、より具体的に克服術を身につけることも大切だ。「今年こそ、やめたい!」「今年こそ、変わりたい!」と思っている人は、山下氏の著書を手にとって、冷静に自分の体質や改善策を見極める時間を作ってみてはいかがだろう。
誰もが何かしら、『やめたい』と思っているのになかなか『やめられない』悪習慣を持っているもの。その悪習慣をゾンビ習慣と呼び、やみつきさせる脳の仕組みを解明、「エモーションシフト」という新メソッドを用いて、「今度こそ」やめられるコツとワザをわかりやすく解説した新刊が『「やめられない」を「やめる」本 -脱・依存脳-』が話題だ。
著者の山下あきこさんは、25年に渡り、脳神経内科の専門医としてさまざま疾病の診療にあたってきた。扱う疾病や症状は主に脳梗塞や認知症、頭痛、めまい、しびれなど。そして、その多くが、飲酒や喫煙、夜ふかしなど、「やめたいのにやめられない」悪しき生活習慣が原因になっているという。
最後に同じような悩みを抱えたDIME 編集部員が登場。『「やめられない」を「やめる」本―脱・依存脳―』の著者、山下あきこ医師に、それぞれのゾンビ習慣についてアドバイスしてもらった。
Q1|不規則生活で肥満気味です
「万年ダイエッターです。かわいい娘たちにとってカッコいいパパであり続けるため、食事制限したり、歩いたり、いろいろがんばるのですが、続きません。成果を上げるコツはないでしょうか」本誌デスク・チバ
A1
「一番のポイントは、協力者や仲間を見つけることです。私の患者さんで3か月で約10kgのダイエットに成功した方がいらしたのですが、その方は弟さんと一緒に運動したり、食事を考えて変えていったことで、うまくいったそう。1人でやってもなかなかうまくいかないことも、仲間がいると刺激になるし、がんばれる。考え方のコツもありますが、人の協力に勝るものはないと思います」
Q2|ついお酒を飲みすぎる
「ともかくお酒が大好き! ストックは欠かさず、ほぼ毎日飲んでいます。お酒は食事をおいしくするし、がんばっている自分へのご褒美でもある。ただ最近、肝臓の数値がちょっと気になるんです」@DIME編集・オビツ
A2
「お酒を飲む時間がリフレッシュになっているのであれば、完全に断酒する必要はありません。ただ『ストックが減ると注文してしまう』というのは依存に片足つっこみかけている状態。体のダメージ的にも休肝日は作ってほしいですね。例えば、運動してスカッとしたら、お酒を飲まずにすんだりしませんか。お酒は適性飲酒が大事。そういう飲酒に代わる別のいい習慣を増やしていけば、飲まなくていい日も増えてきて、健康度も上がりますよ」
Q3|夜ふかしで睡眠不足に
「寝る前の動画視聴が何よりの楽しみ。翌朝早い取材があっても、つい夜中まで見て、寝不足に。いい加減にしたいと思いつつ、つい先延ばしになっています」本誌編集・テラダ
A3
「様々なコンテンツがある動画は情報収集やリラックスに役立つものも多くあります。ただそれで寝不足になったり、睡眠の質が悪くなると日中のパフォーマンスも下がります。ずっと見ないではなく、まずは1日やめてみる、というスモールスパンで考えてみては? それが達成できて、早めに寝られるようになると、日中の体調の良さを感じるようになり、喜びや自信になります」
Q4|やめられない夫をどうにかしたい
「夫が買い物依存です。常にネットを見ては安いから、と買い物をします。実はギャンブルも大好き。とはいえ、注意すると逆ギレされるし、最近は諦めモードです。このように家族の依存をやめさせるにはどうしたらいいですか」本誌編集・ハラグチ
A4
「私は、自分のことは変えられても、自分以外の人の性格や行動は、変えられないと思っています。ですから、『やめてよ』と言ったところで無理。自分が困らないのであればほっておいていいと思いますが、どうしても心配であれば『私はあなたのことが心配だから、やめてほしい』というように『私』を主語にした『i(アイ)』メッセージで伝えてみてはどうでしょう。相手が変わらずとも、気持ちを伝えることは大事。それが思いやりでもあります」
Dr.あきこからのアドバイス
「やめたら手に入る幸せがあることを忘れずにいてほしい! 今、握り締めているものを手放せたら、またほかにつかめることがあります。でもそれは、手放さないと入ってきません。やめたら手に入る新たな楽しみや幸せがあることを知って、〝やめる〟に挑戦してほしいですね」
『「やめられない」を「やめる」本 -脱・依存脳-』
著/山下あきこ(脳神経内科専門医)
脳神経内科専門医が豊富な診療経験から得た知見やエビデンスをもとに、やめられない悪習慣=ゾンビ習慣を引き起こす脳の仕組みを解説。「エモーションシフト」の新理論を活用した、依存脱却のヒントとアドバイスを行なう。実際の診療事例をベースにした10人10通りの脱・依存の物語も必読!
「やめられない」を「やめる」本
山下あきこ・著
全体を5つのパートに分けて「依存脳」を克服する方法を解説する。1.人をダメにする「ゾンビ習慣」 2.「やめたいのにやめられない」ワケ 3.どうしたら「ゾンビ習慣」から抜け出せる? 4.ケース別に解説!依存しにくい脳の作り方 5.「依存脱却」で待ち受ける未来 根本原因はストレスを快楽で打ち消そうとする脳の働きにあるということを根底に、カウンセリング事例を織り交ぜながらより具体的に克服術を指南する。
定価1650円
■山下あきこ プロフィール
株式会社マインドフルネス代表取締役。内科医、産業医。脳神経内科専門医、抗加齢医学専門医、医学博士。アメリカ神経学会会員でもある。1999年に川崎医科大学を卒業し、同大学の総合診療部での研修を経て、福岡大学病院の脳神経内科に入局。米国フロリダのメイヨークリニックにて先端脳研究に携わり、パーキンソン病の研究で「MDS Young Scientist Award」(国際運動障害学会の優秀若手研究者向け賞)を受賞。日本に戻り一般の臨床内科医として活動したのち、健康を自分で作る社会を目指して病院を退職し、株式会社マインドフルヘルスを設立。