米国債券の購入方法
米国債の購入方法は、アメリカ財務省を通じた直接購入と、民間の金融機関を利用する方法の2つがあります。日本においては、銀行や証券会社を通じて米国債を購入することが一般的です。
【銀行や証券会社経由で購入する方法】
銀行や証券会社などの金融機関を通じて米国債を購入することは可能です。
この場合、金融機関ごとに最低引受額が設定されています。
金融機関を通じた購入には、主に以下の2つの方法があります。
【金融機関が政府サイトで購入する】
金融機関が米財務省のウェブサイト「トレジャリー・ダイレクト」を通じて顧客に代わって新発債の入札を行います。このプロセスは手間がかかりませんが、手数料が発生する可能性があります。
【金融機関が流通市場で購入する】
金融機関が流通市場で既発債を購入する方法です。この場合、顧客は金融機関を通じて既発債を購入することができ、また証券口座を通じて米国債の投資信託や上場投資信託(ETF)を購入することも可能です。ただし、これらの取引には手数料がかかる点に注意が必要です。
このように米国債の購入方法にはいくつかの選択肢があり、それぞれにメリットとデメリットがあります。
米国債券の見方と種類
ここでは米国債の種類について順番に解説していきます。
【米国短期国債(Tビル)】
Tビルは、満期が4週間、8週間、13週間、26週間、52週間と非常に短い期間で設定されています。これらは割引価格(ディスカウント)で販売され、購入時には額面よりも低い価格で購入できるのが特徴です。満期時に額面金額が支払われるため、その差額が投資家の利益となります。しかし、Tビルは「リターンが極めて低い」とも言われており、プロ投資家向きといえるでしょう。
【米国中期国債(Tノート)】
Tノートは、満期が2年から10年の範囲で設定されており、半年ごとに利払いが行われます。Tノートはディスカウント、額面(パー)、または割増(プレミアム)価格で販売されるため、購入時の価格は額面を下回ることも、上回ることもあります。中期的な投資を検討している投資家にとって、Tノートは比較的安定した選択肢となります。
【米国長期国債(Tボンド)】
Tボンドは、満期が20年または30年の長期国債で、こちらもディスカウント、パー、プレミアムで販売されます。半年ごとに利息が支払われるため、長期的に安定した収入を見込むことができるのが特徴です。ただし、長期間の投資であるため、金利変動リスクには注意が必要です。
【米国物価連動国債(TIPS)】
TIPは、満期が5年、10年、または30年の国債で、半年ごとに利払いが行われます。TIPSの特徴は、元本がインフレ率に応じて上昇することです。これにより、インフレによる資産価値の目減りを防ぐ効果があります。ただし、デフレの場合には元本が減少するリスクもあります。満期時には、調整後の元本と当初元本のいずれか大きい方が支払われますので、インフレ対策を考える投資家にとって魅力的な商品です。
【変動利付き国債(FRN)】
FRNは、満期が2年で四半期ごとに利払いが行われます。利払額は13週物Tビルの割引レートに基づいて変動するため、金利が上昇する局面では利息も増加します。ただし金利が急落する局面では、FRNの利回りが低下するリスクがあるため、注意が必要です。
【ストリップス債(STRIPS)】
STRIPSは、民間金融機関を通じてのみ購入できる特殊な国債です。金融機関は、まず適格なTノート、Tボンド、またはTIPSを購入し、それを利付き部分と元本部分に分けます。その後、それぞれを大幅な割引価格で投資家に販売します。これらの証券は、満期時に額面価格で償還されるため、割引価格で購入した投資家は満期時に利益を得ることができます。
株式と債券 60/40ポートフォリオとは
株式と債券の60/40ポートフォリオとは、伝統的な資産配分戦略の一つで資産の60%を株式に、残りの40%を債券に投資することを指します。この配分は、長期的に安定したリターンを得ながら、リスクを分散させるための手法として広く採用されています。
また経済状況に応じて株式と債券の比率を調整することで、よりリスクを抑えることも可能です。
大きな市場変動にも対応できるポートフォリオを構築するための有効な手段と言えるでしょう。
ただし、米国債だけに投資すると、銘柄が限られ期間分散が十分に働かないことがあります。
そのため安全性を重視する場合、期間の異なる債券を複数組み入れることで、ポートフォリオのリスク分散がより効果的になるでしょう。
とはいえ、筆者自身の個人的なポートフォリオに限って言えば、全体の1割程度を債券に投資しており、投資家のスタイルによっても比率は変わるため、あくまでも参考になる考え方として紹介させて頂きました。
おわりに
米国債券投資は、安定したリターンと低リスクを求める投資家にとって魅力的な選択肢です。Tビル、Tノート、Tボンドといった米国債の種類や仕組みを理解し、自身の投資目標やリスク許容度に合わせた戦略を立てることが重要です。株式と組み合わせたポートフォリオ運用や、米国債の購入方法についても検討するなかで、長期的に安定した資産形成に近づくと思います。
今回は「知ってるようで知らない米国債券投資」について解説させて頂きました。
文//鈴木林太郎