過激なスポーツで腸内環境が悪化→便秘に!
青江教授が特に注目しているのが、小麦ブラン(ふすま)。腸の働きに大きな影響を与える酪酸産生菌の比率を増加させる発酵性食物繊維「アラビノキシラン」が非常に多く含まれているのだという。
発酵性食物繊維の多い代表的食品が「小麦ブラン(小麦ふすま)」
そもそも腸内で産生される酪酸は、・酸性環境維持 ・抗炎症作用 ・・細胞の増殖・分化・アポトーシスの調節 ・制御性 T 細胞(免疫システム)の誘導などの重要な働きを担っているが、中でも以下のように、腸の働きに深くかかわっている。
・粘膜血流の増加(腸の運動)
・電解質と水分吸収の刺激(下痢防止)
・結腸の主要エネルギー源としての役割(腸の蠕動運動促進)
・腸上皮バリアの保護
・腸の粘液物質の分泌促進
興味深いのは、運動と腸内細菌の関係だ。適度な運動トレーニングで酪酸産生菌が増加する一方、過激なスポーツ後には酪酸産生菌が減少するという。もしかしたら、過激な筋トレによる酪酸の減少が、便秘の隠れた原因となっていることがあるかもしれない。
アスリートの腸内環境は、高齢者と似ている!?
京都府立医科大学大学院生体免疫栄養学講座の内藤裕二教授は、アスリートの運動パフォーマンスと腸内環境の関係性について解説した。アスリートにおける腸の役割として、(1)回復力・パフォーマンス、(2)タンパク質の同化・異化、(3)睡眠・概日リズムの3点が挙げられるが、興味深いのは、腸粘膜の酸化ストレスを軽減することでスポーツパフォーマンスが向上する可能性があるという点。
またアスリートは筋肉を増やすためにたんぱく質をしっかり摂るのが常識とされているが、内藤教授によると意外なことに、アスリートは高齢者と同様にタンパク質から筋肉を作る働きが弱くなっている可能性があるという(これを読んで衝撃を受けている筋トレマニアも多いのでは)。「これは、(おそらく)激しい運動により、タンパク質から筋肉を合成する働きに抵抗が生じていると考えられ、それをリセットしなければ、アミノ酸やタンパク質を補給してもスポーツパフォーマンスの要である筋肉の維持は難しい」(内藤教授)。これを解決するには、腸内環境を整えることで、タンパク質同化抵抗性を解除する必要があるとのこと。食物繊維と筋肉維持の関係も示され、「食物繊維欠乏により骨格筋が萎縮し、握力が低下するが、これらの症状は高発酵性食物繊維の摂取により改善する」という。
アスリートは高齢者と同様にタンパク質から筋肉を作る働きが弱くなっている可能性がある