この記事を読んでいる人の中には、7月の「Windows停止問題」に巻き込まれた人もいるかもしれない。
これはWindows OSそのもののトラブルというよりも、セキュリティーソフトのトラブルだった。このセキュリティーソフトを導入している個人は決して多くはないはずだが、それでもトラブルの最中には筆者も大いに動揺した。「もしかしたら、我がPCにもそのような障害が発生するのか?」という具合に。
運の悪いことに、その時の筆者は海外にいた。持参しているPCが使えなくなったら、商売上がったりである。
その窮地を救ったのが、2年前に2万円台で購入した低価格Chromebookだった。
「今いる場所」を言い訳にできないライターという商売
まずはライターの仕事について少し解説したい。
フリーランスのライターは、ネット環境とPCとスマホ搭載のカメラさえあればどこにいてもできる。海外にいながら仕事をして金を稼げる、ということだ。
こう書くと、何も知らない人からは過度に羨ましがられてしまう。数年前には「海外旅行しながらライターとして稼ごう!」というキャッチコピーのライターサロンなるものが乱立していた。しかし、「海外にいながら稼げる」というのは「今いる場所が仕事の遅延の言い訳にはならない」という意味である。韓国だろうとアメリカだろうとブラジルだろうとセントヘレナ島だろうと、「今ここにいるから記事を入稿できません」は通用しないのだ。
なかなかどうして、ライターは過酷な商売である。
そんな中で持参のノートPCが故障、或いは障害が発生してしまったら、現地で何とかするしかない。治安の悪い地域では、ノートPCを持っていることが知れると強盗や置き引きに狙われる可能性もある。実際、筆者は海外でノートPCの盗難に遭ってしまった。やむを得ず、高い金を出して現地で新しいノートPCを購入する羽目になったのだ。
そのような事態を予め想定した時、Windows OSのノートPCではなくChromebookを持っていくという選択肢が浮上する。または、WindowsのPCとChromebookの両方を持参するという手もある。
Googleドキュメントで原稿を執筆する
この手段は、日頃からGoogle Chromeを愛用している人には最適だと筆者は考える。
今日日、原稿を書くためのプラットフォームはWordだけに留まらない。筆者の場合、クラウド保存が前提のGoogleドキュメントにとりあえず原稿を書き、あとは編集部の方針に応じてWordファイルに出力したり、WordPress等のCMSにコピー&ペーストしたり。出口がどこであれ、必ずGoogleドキュメントに文字を打ち込むという流れだ。
この方法であれば、使うPCがWindowsだろうとChromebookだろうとほぼ同質の仕事ができる。もちろん、Windowsに何かしらの障害が発生した時も、すぐさまChromebookに切り替えるという使い方も可能だ。
ライターの仕事なら難なくこなせる!
筆者の愛用する『IdeaPad Flex 360 Chromebook』のパフォーマンスを簡単に書けば、お世辞にも高性能高機能とは言えない。
メモリもストレージも最低限、プロセッサーはローエンドモバイル向けの製品である。あまりブラウザを立ち上げ過ぎると、動作がぎこちなくなってしまう。
しかし、Googleドキュメントを使った記事執筆と簡単な写真加工であれば特に支障はない。
さらに、ハイエンドPCよりも省電力パフォーマンスに優れている点も挙げるべきだろう。即ち、その分だけバッテリーの持ちがいいということだ。ハイエンドプロセッサーを搭載した機種、ましてやグラフィックボードのあるゲーミングノートPCの場合はそうはいかない。「スタミナの量」は地味な部分ではあるが、そのPCの実用性を決定づける重要な要素である。
「筆者は海外でノートPCを盗まれたことがある」と上述したが、この際に盗まれたのはやはり低価格帯のChromebookだった。これがグラフィックボード搭載のゲーミングPCならショックは大きかったはずだが、幸いにも2万円そこそこで買ったChromebookである。現地で新しいPCを買う羽目になったが、それでも最低限の出血で済んだ……ということだ。
特殊なシチュエーションを乗り切る1台
治安の安定している日本で、自宅と職場を往復する日常を送っているという人にとってはChromebookの必要性はあまりないかもしれない。
従って、上に書いたことはかなり特殊なシチュエーションを想定した用途ということになってしまう。
しかし、実際に発生した「OSの障害」自体が非常に特殊なシチュエーションでもある。これは南海トラフ巨大地震の発生を想定するのと同じで、「もしもWindows PCが不適な状況に直面したら?」ということは多少でも考慮しなければならないはずだ。
2万円台の低価格Chromebook。とりあえず持っていて損はない1台である。
文/澤田真一