「健康のためにお湯に浸かろう」というメッセージを聞いたことがある人は多いだろう。しかし、熱中症時には推奨される行為ではないようだ。いったいどのようなリスクが考えられるのか、米盛病院救急調整室教育部長の川原加苗先生に教えてもらった。
お風呂に浸かることで、熱の上昇をうながしてしまう!?
お湯に浸かることがなぜ健康にいいのかというと、体が温まることで血管拡張効果が期待でき、血の巡りが良くなるからだ。血の巡りが良くなることで、体全体に酸素や栄養分が運ばれると同時に、体に溜まっていた疲労物質や老廃物の回収が促進されるという。とはいえ、どんな時でもお湯に浸かることが推奨されるわけではなく、状況によっては死を招きかねない行為となる。
「元気な時であれば、お湯に浸かることで適度な汗をかいてうまく体温も下がり、体もすっきりします。しかし、熱中症の初期段階に入ってくると、体の熱も上がってきています。そのような状態の時にお湯にしっかり浸かると、過剰に汗をかく可能性があります。つまり、脱水が進むので、更に体温が上昇しかねないのです。熱中症気味の時にお湯に浸かるのは危険で、最悪死に至る可能性すらあります」
お風呂で死に至る2つの例とは?
お風呂場で死ぬというと、寒暖差による冬場のヒートショックが有名だが、夏場のお風呂も油断してはいけないのだ。ヒートショックのように、突然心肺停止になるということはないにしろ、お湯に浸かっている間にじわじわと熱が体を蝕んでいくのだ。
■(1)意識レベルの低下により溺死する
「死に至る例として、主に2つのケースが考えられます。1つめは意識レベルの低下が起こることによる溺死です。熱中症の症状の中に意識障害というものがあります。体温がじわじわ上がってきて、熱中症が軽度から重度にすすむと、意識障害が起こります。その際に家族に気づいてもらえればいいですが、気づいてもらえないとだんだんお湯に沈んでいき、溺れて呼吸が出来なくなり呼吸停止から心停止に至ります」
■(2)体温上昇により細胞が壊れる
もう1つは、意識障害が起こったのち、溺れはしなかったものの、熱が上がり続けて細胞が体の中で壊れ、体の様々な機能が正常に働かなくなった結果の死亡だという。
「体温が上がり続け42℃を超えてくると、人間の細胞というのは壊れはじめます。脱水や人体の機能の低下により、体内にあるカリウムという物質がうまく排出されなくなると、高カリウム血症というものを起こします。この高カリウム血症だけでも命の危機にさらされますが、更に心室細動といった致死的な不整脈も起こり、亡くなるというパターンも考えられます」
「お風呂は健康にいい」というイメージはあるものの、熱中症時には体調を悪化させかねない。熱中症気味かなと感じたら、シャワーを浴びるだけにとどめ、汗を流してさっぱりするくらいが理想のようだ。
取材・文/田村菜津季
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