米国起業家列伝シリーズ「ドナルド・トランプ」
ドナルド・ジョン・トランプ(以下トランプ)は1946年6月14日、ニューヨーク市クイーンズで生まれました。父親のフレッド・トランプは不動産業で成功を収めており、トランプも幼少期からビジネスに興味を持って育ったようです。フォーダム大学で2年間学んだあと、ペンシルベニア大学に編入して経済学を学び、卒業後は父の会社に入社しました。
不動産業での成功
トランプは父の会社を継ぎ、ニューヨーク市を中心に不動産事業を拡大しました。
不動産業界で頭角を表したのは1970年代後半、ニューヨーク市と共にホテルを再開発して「グランド・ハイアット・ニューヨーク」として再生させたことがきっかけです。
その後、彼の代表作である「トランプ・タワー」は1983年に完成し、ニューヨークのランドマークとなりました。またカジノ事業にも進出し、アトランティックシティにトランプ・プラザやトランプ・タージ・マハルなどを開業しました。
トランプの豪華な不動産開発はしばしばメディアの注目を浴び、成功者としてのイメージを確立しました。こうして米国の不動産業界で最も有名になったトランプはエンタテイメント業界へと進出していきます。
リアリティ番組司会と破産
2004年、トランプはNBCのリアリティ番組「アプレンティス」のホストとして、テレビ業界に進出します。この番組は若きビジネスパーソンがトランプの下で様々なビジネス課題に挑戦するもので、彼の「You’re fired!(君は解雇だ!)」という決め台詞は全米で大きな話題を呼びました。この「アプレンティス」の成功により、トランプは全米での知名度をさらに高め、ビジネスだけでなくタレントとしての人気が上昇し、さまざまなメディアに出演することでブランド力を不動のものとしていきます。
とはいえ、トランプ個人が破産申告をしたことはありませんが、彼が経営していた企業は1991年から2014年の間に合計6回の破産申請(会社更生法適用申請)を行っています。これは、企業が営業を続けながら借り入れ資金の返済を延期したり、返済額の減額交渉を行ったりしたことを示しています。ところが、こうした情報が表に出ても逆風にならないところが、トランプのエンターテイナーとしての凄みを感じさせるエピソードかもしれません。
2016年の大統領選挙
トランプは2015年に共和党から大統領選挙に出馬することを表明し、当時は多くの専門家やメディアから驚きや疑問の声が上がりましたが、結果的に共和党の候補者指名を獲得し、2016年11月の大統領選挙で民主党のヒラリー・クリントンを破り、第45代アメリカ合衆国大統領に選出されました。
トランプの選挙キャンペーンはSNSを駆使し、特にツイッター(現在のX)を用いた直接的なコミュニケーションが若年層や無党派層に強く支持されました。
選挙スローガンは「Make America Great Again(米国を再び偉大に)」。
大衆を巻き込み扇動するために何をすべきなのか、その嗅覚は天才的なものがあるのもトランプの特徴です。