7月20−21日、東京ビッグサイトで開催された「東京キャンピングカーショー2024」で、国産キャンピングカービルダー「バンテック」より、「ASTRARE(アストラーレ)GX4」(1210万円~)が発表された。
「GX4」は「Grand Explorer 4×4」の頭文字。「世界の様々なフィールドを制覇するクロスカントリーキャンパー」というコンセプトで開発されたという。
バンテックと言えば、「ZiL」シリーズに代表されるキャブコンの印象が強いが、「ASTRARE GX4」のベース車両は意外にもハイラックスだ。
「バンテックの主流はカムロードベースのキャブコンではありますが、我々の技術力を発揮し、新たなニーズを開拓していこうとあえてハイラックスベースの”GX4″を開発しました。
もともとタイにある工場で、先行してタイのニーズにあった”アルファ”を開発、販売しているんです。
会場でお披露目してる”GX4″は、”アルファ”を日本仕様に改良したプロトタイプなんです」(バンテック広報部 石川真之介さん)
▲ディンプル効果を狙ったデザインや、ドア上に雨が滴り落ちにくい形状など、雨と風の動きを計算
日本仕様はギミックが満載
「GX4」に入るとその広さに驚く。
ハイラックスベースのキャンピングカーというと、荷台にシェルを載せたトラキャンをイメージする。使わないときにシェルをはずせるし、値頃感があるのだが同等サイズのキャブコンに比べるとどうしても狭く圧迫感がある。
「どうせハイラックスベースなのだから”GX4″も知れているだろう」という予想を裏切られるゆとりだ。
「キャブコンの開発・製造に長年主軸を置いてきたバンテックだからこそ、ハイラックスもちゃんとキャブコンとして展開し、車内で快適に過ごせるようにしました。そんなキャブコンへのこだわり、信念が込められているんです」(石川さん)
展示車両はプロトタイプなのでまだまだ改良されるそうだが、日本仕様はタイ仕様とはガラリと変わってギミックが満載なのだとも。
印象的なのがベッド展開だ。
ソファ座面を持ち上げてから引っ張り出す仕組み。重いボードを何枚もはめ込むのは大変だが、「GX4」では切り欠きボード1枚のみと簡単だ。
▲オプションでサンルーフがつき、バンクベッドから顔を出せるほど大きく開く。網戸と併用すればかなり涼しく眠れそう
また、バンクはスーッと手前に引くだけでたたまれたマットが回転しながら出てきてベッドに変身する。
バンクベッドはなかなか広く、その分、リビング部分は圧迫感が生じるが、これくらいベッド展開がイージーなら寝る前ギリギリまでマットをたたんでおける。
「従来のマットをはめ込む方式では、外したマットをどこに置くかが悩みでした。必要なければ自宅に置いて出かけるなんていうのもひとつの手ですが、今回のベッドメイクのギミックは、そうした悩みを解消したものです。そうした新しい試みが満載なんですよ」(石川さん)
この狭さはいかがなものか…と思ったが、マルチルームの正面には両側に取っ手があり、これを引き出すことでおおよそ1.5倍ほどに広げられるという。リビングもマルチルームも快適に使うためのうれしいアイデアだ。
今回の展示では調整中のため展開できなかったが、テーブルも一工夫あり。
通常、キャンピングカーのテーブルは1本の足だけで立っているものが多く、使わないときにはバンクベッドの上などに置いておく。ところがコレが邪魔になるし、いちいち持ち上げるのも大変だ。
「GX4」のテーブルは天板も足もたたんで、ベンチの運転席側横に格納するというギミックを搭載。テーブルを使うときはパタパタッと引き出すだけなのだとか。
当たり前と思っていた機能を、より使いやすい構造に変える発想力はさすが、日本を代表するビルダーだ。
快適装備をチェック
近年はキャブコンはもちろんバンコンにもエアコン搭載が当たり前なのだが「GX4」の壁面には見当たらない。
熱帯性気候のタイで先行発売されている「GX4」なのにエアコンなしなんて…と不安に思ったが安心を。
▲縦に並ぶ丸い穴がエアコンの排気口と吸気口。エアコンはここを開けてから使用する
「GX4」ではEcoFlow「DELTA Pro」で電気をまかなっており、エアコンもEcoFlow「WAVE2」。
新しく発売されたEcoFlow「Alternator Charger」も装備されていて、走行中もアイドリング時も充電可能だ。
ポータブル電源をサブバッテリー替わりにすると充電に時間がかかるイメージがあるが、シガーソケットからの従来の充電より8倍速く充電が完了(1.3時間で1kWh充電)するのでかなりストレスは減りそうだ。
いずれもアプリだけで操作できるので、リモコンをいちいち探す手間もかからない。
▲ギャレーはコンパクトながら深めのシンク、電子レンジ、冷蔵庫を配置している
▲「ZiL Noble」でもおなじみのワイングラス収納ケースは、揺れに強く、出し入れしやすい仕様に改良されたという。過酷な山道を越えた先で優雅に過ごせるなんて
グラベルも泥道も楽に走破する
気になるのは走破性だ。
せっかくのハイラックスなのにモタモタするようでは残念でしかない。
「自分でハンドルを握ったわけではありませんが、先日、タイで同乗してきました。
キャンピングカーなので当然、通常のハイラックスよりも重量があるわけですが、タイのグラベルやぬたぬた泥道は難なく走り抜けました。
ハイラックスのポテンシャルの高さに加え、ダンパーなども専用でチューニングされたものが入っているんです。
日本仕様の細かな仕様はこれから決まるわけですが、みなさんが期待している部分ですからね。期待してください!」(石川さん)
【問】バンテック
取材・文/大森弘恵