都市居住者VS郊外居住者、より幸せなのはどちら?
都市居住者は、都市以外の場所に住む人に比べて幸福度や経済的な満足度などが低い傾向にあることが、新たな研究で報告された。
この研究では、人が最も幸せになれる「ゴルディロックスゾーン」は、都市と農村の間の郊外にあることが示されたという。アムステルダム大学(オランダ)アーバン・メンタルヘルス・センターの心理学者であるAdam Finnemann氏らによるこの研究結果は、「Science Advances」に7月19日掲載された。Finnemann氏は、「都市に隣接する郊外が、心理的満足度が最も高く、かつ平等性も高い」と述べている。
この研究では、UKバイオバンクから抽出した40~70歳の成人15万6,000人のデータが分析された。研究グループは、最寄りの都市中心部からの距離だけでなく、その都市の人口密度も考慮して、対象者が都市、郊外、農村のいずれに住んでいるのかを評価した。
このような指標を採用した理由についてFinnemann氏は、「同じ『都市から15km離れた場所』という条件でも、ロンドンの場合では都市化が進んでいるが、リーズの場合では農村が広がっているという違いがあるため」と説明している。
それぞれの居住環境により、平均的なウェルビーイング、社会的満足度、および経済的満足度がどのように異なるのかを検討した結果、都市に住む人は郊外や農村に住む人よりも所得は高いが、そのことが幸福度を高めているわけではないことが明らかになった。都市に住む人では、そのほかの環境に住む人に比べて、ウェルビーイング、社会的満足度、経済的満足度を測定する8つのドメイン(全般的な幸福度、人生の満足度、家族関係、友人関係、孤独感、所得、経済的満足度、仕事満足度)のうちの7つにおいて低スコアと関連することが示された。
これらのスコアは都市居住者の中でも変動が大きく、裕福な人は経済的に困窮している人よりも都市での生活に対する満足度が高いなど、大きな不平等が生じており、とりわけ都市中心部でそれが顕著であることが示唆された。さらに、最も幸福度が高い(満足度が高く、スコアの変動が少ない)地域は郊外であることも判明した。
このような結果であるにもかかわらず、人々は都市に集まる一方である。本論文の背景情報によると、都市居住者の割合は、1910年代の10%から、2050年には68%になると予測されているという。
ただし、Finnemann氏は、「農村を離れたり、都市から郊外に移住したりすることで、より幸せになると保証されるわけではない」と言う。同氏は、「郊外という場所が最適な距離として示されたのは、幸福な人がその場所に移り住んでいるからであり、郊外という場所自体がその人の幸福を高めているわけではない可能性がある。
したがって、われわれが得た知見は、郊外に引っ越せば誰もが心理的な恩恵を受けるということを意味するものではない」と話している。(HealthDay News 2024年7月23日)
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Abstract/Full Text
https://www.science.org/doi/10.1126/sciadv.adn1636
構成/DIME編集部