ファンダムの基本的立ち位置は「放っておいてくれ」
今、推しの究極系として「ファンダム」が注目されている。そういった対象は日本だと〝オタク〟と呼ばれていたが、その違いは何か?
「日本のオタクと呼ばれる方々は、お金や時間、労力を注いで〝推し〟を応援し、育てるという感覚を持っていることが多いですよね。その部分は非常によく似ていますが、ファンダムはそれにとどまらない。例えばK-POPのファンダムたちは自ら共同で出資して応援広告を出すし、テイラー・スウィフトのファンダムは政治的な活動もする。そういったサポートも自主的に行ないます」
こう分析するのは東京都市大学メディア情報学部の岡部大介教授。ファンダムは推しに対して、ただ投資して応援するのではなく、自らもクリエーションすることで推しに還元することを重視する。
「今の日本でも10~20代の子たちを見ていると、ファンダムのように自分でファンアートなどをクリエーションすることがアーティストを応援することになるという認識があります。少し前にアイドルたちを応援するためにファンが何枚もCDを購入するようなビジネスモデルがありましたが、そういった商業的な色合いが100%に近いような手法は、もう日本で成立しないかもしれません」
Z世代は推しを応援するために何かを消費することと、発信することがリンクしている。何かを購入して楽しむだけではなく、どうSNSで発信していくか? 彼らにとってはその部分も重要だ。
「さらにZ世代は『これ、いいな』と感じたら、SNSを通じて自分より先にその魅力に気づいた人たちと、簡単につながることもできます。そういった〝メンター的な人〟が身近にいるので、活動もスムーズになるんです。また良くない行動をとると同じ界隈の中で自浄作用が働くのも特徴的です。だからこそ行政や企業も安心してつながることができる」
実際、ファンダムたちが活動することで地域の活性化につながるなど、経済が大きく動く事例は後を絶たない。だが岡部さんにはその風潮に危惧する部分もあるという。
「企業や行政がファンダムをコントロールしようとすると、彼らは冷めていきます。基本的にファンダムは『放っておいて』という立ち位置なんです。そういった距離感をキープすることが重要で、企業や行政は必要以上にファンダムに寄りすぎないほうがいいようにも感じますね」
SWIFTIES=テイラー・スウィフトのファンダム
テイラーの呼びかけにより3万5000人以上が選挙の新規登録を実施し、トランプ元大統領を非難する投稿に賛同。政治に影響を及ぼす。
東京都市大学 メディア情報学部
社会メディア学科教授
岡部大介さん
横浜国立大学教育学研究科助手、慶應義塾大学政策・メディア研究科特別研究教員を経て、現職に就任。人々の社会文化的な活動の実態研究がライフワーク。
韓国人俳優・チェ・ジョンヒョプのファンダムにインタビュー!
CHAE JONG HYEOP JAPAN FANDOMさん
(X:@C_J_H_JAPAN)
推しが喜んでくれることがファンダムの喜びなんです
──チェ・ジョンヒョプさんのファンダムになったきっかけは?
好きになったのは2年前に放送された『時速493キロの恋』という主演ドラマです。当時、日本ではあまり認知されておらず、サポートする人もいませんでした。でも今年1月、韓国人俳優が主演となった初の民放ドラマ『Eye Love You』に、ジョンヒョプさんの主演が決まり、せっかく日本で出てくれるなら、自分が活動をサポートしたいと思ったことがきっかけです。
──具体的にはどんな活動をしているのでしょうか?
まずはXを立ち上げて、サポートメンバーを募るところから始めました。最初の活動は韓国では定番の「コーヒーカーサポート」。俳優さんの顔をデザインしたキッチンカーを撮影現場に手配して、コーヒーや軽食をプレゼントしました。あとはクラウドファンディングで誕生日にサポート広告を出しています。
──ファンダムでよかったことはどんなことですか?
韓国の事務所と連携したり、手探りで業者を探したりと準備は大変で、実際にいいことはそれほどないかもしれません(笑)。でも推しが自分たちの活動をインスタにアップして、喜んでくれるなど、自分たちの活動を認めてもらえる幸せが大きいです。
取材・文/高山 恵
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