「実食は800種以上!僕にとって柿ピーは推しを超えて研究対象ですね」
柿ピー研究家 中倉隆道(りゅうどう)
柿ピー研究家、フリーアナウンサー。中央大学大学院理工学研究科で博士前期課程修了後、NHKに入局。フリーに転身してから思う存分、柿ピーの研究を続ける。『マツコの知らない世界』で柿ピー研究家として出演し、ブレイク。
今後の人生を考えた時、柿ピーの研究に時間を費やすことを決めた
NHKのアナウンサーという誰もがうらやむ仕事を投げ打って、柿ピー研究家への道を突き進んだ中倉隆道さん。その熱はどのように生まれ、どこへ向かっているのだろうか。
「NHKに入局し、初任給で買ったのは柿ピー20袋でした。以来20年以上、柿ピー漬けの毎日を送っています」
柿ピーとの最初の出会いは6歳の時。おやつに制限のある厳格な家に育ち、スナック菓子の洗礼を受けずに過ごした中倉さん。しかし父が晩酌中につまんでいる柿ピーが気になってしかたない。あれは大人の食べ物と諭されるも、とうとう禁断の果実に手を伸ばす。
「夜中に盗み食いしちゃいました。封を開けた時の魅惑的なにおい、頬張ればカリカリという音がリビング中に響き渡る。やや濃いめの醬油と香ばしい柿の種、そしてピーナッツの甘いコクが混じり合い、なんておいしいんだ!! と。衝撃的な出会いを体験してしまいました」
その後、禁断の果実・柿の種は中倉少年の口に入らず、自分で稼いだ金で買うという段階で再会を果たしたのだ。そこから始まる推しとの蜜月の日々。
「最初の赴任地は福岡で、休日は『柿の種』を探し歩きました。そのうちに気づいたんです。メーカーや地域によって柿の種の形も味も食感も、ピーナッツの配分も独自の個性を持っていることに」
気付いたらもう止まらない。「柿ピーの番組を作りたい!」という目標が生まれるも全国の柿ピーに詳しい人はおらず、取材は難航。番組の企画書を作るもメーカーの宣伝になってしまうのではとか、『柿の種』は地味、などの意見により、NHKでの放映はお蔵入り。
「柿ピーを愛するものとして、本当に悔しかったのを覚えています」
作り手の工夫を知るほどに、旨さの秘密、その長い歴史、全国に広まった理由を知りたい、伝えたい、そんな思いが深まっていったそう。
「先々の人生を考えたとき、自分の好きなものを研究し、推しの魅力を幅広く伝える人になりたいと思いました」
そしてNHKを離れてフリーの身となり、ガチな柿ピーの研究に没入。袋を開けた時の香りから、サイズ、原材料、断面の空洞具合、パッケージに至るまでデータ化してチャート分析。その数、現在までに800を軽く超す。コツコツと研究を重ね、分析した結果は論文提出のように自費出版でまとめた(現在、既刊4巻)。その資料性の確かさ、分析の鋭さ、初出しの情報の多さは、柿の種業界をも震撼させる充実の内容で、メーカーから資料提供を求められることもしばしばだという。
「データ分析は各社の比較のように見えますが、自分にとって今まで出会った柿の種のすべてが愛おしい。柿の種の誕生から、今年、2024年にちょうど100年を迎えますが、業界が停滞しないよう、メーカー同士のハブ役や刺激になれればいいなと思っています」
メーカー同士のコラボ商品を提案したり、こんな柿ピーを食べたい! と商品企画を売り込んだり、中倉隆道監修の商品も次々と誕生。しかし、そこに儲けたいという欲はない。ただひたすらに推しの魅力を広めたいという思いがあるからこそ、舌のこえた消費者をも魅了する。すべては推しの進化と発展のために、研究は未だ終わることはない。
自宅の壁一面を埋め尽くすのは、常時300種の柿ピーを陳列する「柿ピー棚」。必ず同じものを4つ購入し、2つは保存、残りは食べて研究にあてる。
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