なぜ、ボールペンを発売したのか？家電、スマートデバイスからライフスタイルブランドへと変貌を遂げるXiaomiのしたたかな経営戦略

家電メーカーからライフスタイル全般へ

今回の展示会で発表された商品カテゴリで最も多かったのが「ライフスタイル」だった。それだけXiaomiが注力しているといっても過言ではないだろう。

『Xiaomi 大容量ジェルペン（5本パック）』は5色のジェルペンが一箱のセットになっている。価格は480円。

なかでも『Xiaomi ボールペン』や『Xiaomi 大容量ジェルペン』といった文房具はこれまでのXiaomiに抱くイメージとはかけ離れており、様々なメディアが半ばネタのように取り上げていた。他にも『Xiaomi 偏光サングラス』や『Xiaomi スーツケース Classic Pro』といったアイテムも発売予定だ。

一見、Xiaomiが新しい取り組みを始めたかのように見えるが、実は中国におけるXiaomiはすでに家電・デバイスメーカーからは一線を画した存在になりつつある。中国にあるXiaomiのポップアップストア「小米之家」では、スマートフォンや家電をはじめ、トラベル用品やアパレル、食品など様々な商品が販売されている。それだけではなく、Xiaomiのブランドイメージに沿う他社商品のセレクトショップ「小米有品」も展開している。まさに総合ライフスタイルブランドへと成長を遂げているのだ。

また、アプリ「Mi Home」を経由してほとんどの家電やデバイスを一括管理できることもXiaomiの特徴として挙げられる。今回発売される『Mi モーションナイトライト 2 Bluetooth』や『ロボット掃除機 S20』も同様だ。ライフスタイルをIoTで支えるというのはXiaomiの強みだろう。

『Mi モーションナイトライト 2 Bluetooth』はアプリで光り方や時間帯などを管理できる。

そして、2023年12月には渋谷のHz SHIBUYAでポップアップスペースを期間限定で展開し、2024年6月から9月まで渋谷PARCOにポップアップストアを展開している。冒頭で紹介した『Xiaomi 14 Ultra』や『Xiaomi Pad 6S Pro』といったフラッグシップ商品をフックにXiaomiブランドの認知度を向上させ、次なるステップとして実店舗の運営に乗り出すのだろう。いずれは中国と同様に、消費者の生活を幅広く支えるライフスタイルブランドとして定着させる――そういう戦略なのではないだろうか。

今回発売した、何気ない文房具の一つであるボールペンには、Xiaomiが描く日本における構想の一端が隠れているのかもしれない。

取材・文／桑元康平（すいのこ）