連日盛り上がりを見せるパリ五輪。選手の努力や活躍に熱視線を送る多くの観客の陰で、残念ながら別の目的で熱視線を送る人もいる。
それは、性的な目的で女性アスリートを捉える〝悪意ある視線〟だ。
盗撮問題は、これまで何度も問題視されてきた。肌露出の高いユニフォームが盗撮の対象となり、前回の東京五輪では女性アスリートの性的な画像の流出が大きな問題となった。
その手口は巧妙で、可視光カメラにとどまらず、赤外線カメラによってユニフォームの中に着用している下着や身体を撮影する悪質なものもあった。
高機能化するカメラ、そして競技場内の撮影を完全にコントロールすることの難しさ。解決するにはハードルが高いと思われていたこの問題に向き合ったのが、大手スポーツメーカーのミズノだ。
ミズノが開発した「赤外線防透け生地」とは?
アスリートが最大限のパフォーマンスを発揮できるユニフォームとは何か。
これを追究してきたミズノは、動的パフォーマンスのアップをめざした高機能性のユニフォームを多く手掛けてきた。しかし、前述の通り、それだけではアスリートが健全にスポーツを行なえないのが現状だ。
そこでミズノが取り組んだ新規技術開発こそが「赤外線防透け生地」である。正式名は「ドライエアロフローラピッド」という。
■防透け性とクーリング機能を兼ね備えた究極の生地
「赤外線防透け生地」は、近赤外線領域の吸収性に非常に優れた「特殊な繊維」を応用したもの。これにより、赤外線カメラに対する防透け性が向上する。
さらに、それだけではない。この特殊な繊維は、吸収した赤外線(熱)を水分の気化に利用することで、生地の蒸散性を促進し、クーリング機能も兼ね備えている。
心理的にも身体的にも競技へ集中できる環境をサポートする、まさに最大限のパフォーマンスを引き出す生地だ。
■実際のところ、どこまで透けないのか?
気になるのは、どこまで防透け性があるのかという点。百聞は一見にしかず、ということで以下の画像を見てほしい。
まずは、「赤外線防透け生地」を使用していないスポーツウェアの場合。赤外線カメラで撮影した写真では、下着の「MIZUNO」のロゴがくっきりと透けて見えてしまう。
「赤外線防透け生地」を使用していないスポーツウェアを、可視光カメラで撮影した場合(左)と赤外線カメラで撮影した場合(右)
一方で、「赤外線防透け生地」を使用したスポーツウェアの場合がこちら。赤外線カメラで同じように撮影したところ、「MIZUNO」のロゴの視認性が圧倒的に下がっていることがわかる。
「赤外線防透け生地」を使用したスポーツウェアを、可視光カメラで撮影した場合(左)と赤外線カメラで撮影した場合(右)
可視光カメラのもとではわかりにくい違いだが、赤外線カメラで撮影してみると一目瞭然。生地の違いによって、安心感は格段に変わる。
バレーボール女子、卓球女子のユニフォームに採用
バレーボール女子のユニフォーム
「赤外線防透け生地」を使ったユニフォームは、バレーボール女子と卓球女子を含む全6種目のユニフォームに搭載されている。
こうした被害に悩むのは何も女性だけではない。アーチェリーや近代五種、ライフル射撃では男女のユニフォームに採用されている。
アスリートの心も身体を守るミズノの新技術は、環境の改善にどこまで貢献するのか。
その結果を確かめるためにも、我々はぜひとも選手たちのパフォーマンスへ熱視線を送りたいものだ。
文/DIME編集部