バイデン大統領から後継候補に指名されたカマラ・ハリス副大統領は、1964年10月20日生まれの59歳。2004年にサンフランシスコ地方検事に選出された後、カリフォルニア州司法長官を経て、2016年の上院議員選挙に当選。アフリカ系アメリカ人女性としては2人目、南アジア系(インド系)アメリカ人としては初の連邦上院議員となった(父親がジャマイカ出身、母親はインド出身)。
そして2021年1月20日、バイデン大統領の指名により女性・アフリカ系(黒人)・インド系アメリカ人として初の副大統領に就任した。
そんなハリス氏の大統領候補の指名獲得に向けた動きは、市場にどのような影響をもたらすのか。三井住友DSアセットマネジメント チーフマーケットストラテジスト・市川 雅浩 氏によるリポートが到着しているので、その概要を紹介する。
カマラ・ハリス(Kamala Devi Harris)氏
バイデン大統領は選挙戦撤退とハリス副大統領支持を表明、後継候補はハリス氏一本化の流れ
米民主党のバイデン大統領は2024年7月21日、11月の大統領選挙戦から撤退し、後継候補としてハリス副大統領の支持を表明。
これを受けハリス氏は同日、「バイデン大統領の支持を得られたことを光栄に思う。この指名を勝ち取るつもりだ」と声明で述べ、候補者の指名獲得に意欲を示した。
また、ハリス氏は翌22日、ホワイトハウスで開かれたイベントに参加後、選挙事務所を訪問するなど、指名獲得に向けた活動を開始した。
こうした中、ペロシ元下院議長や、後継候補に取り沙汰されていた複数の有力知事(カリフォルニア州のニューサム知事、ミシガン州のウィットマー知事など)が相次いでハリス氏の支持を表明。
また、シューマー上院院内総務とジェフリーズ下院院内総務も、ハリス氏の支持を決めると報じられており、後継候補はハリス氏一本化の流れが固まりつつある。
■民主党が迅速に大統領候補を選び直せるかに注目、ハリス氏選出で早期に選挙戦を立て直しか
大統領選挙が3か月半後に迫るなか、民主党は早期に大統領候補を選び直すことになるが、候補者がハリス氏だけか、複数となるかによって、大統領候補の選定時間に大きな差が生じることになる。
また、民主党はもともと、8月19~22日の全国大会前に、代議員によるオンライン投票を予定しており、民主党が迅速に大統領候補を選ぶことができるかに注目が集まっている。
現時点では、ハリス氏が一本化の流れのまま大統領候補に選出され、民主党が一気に選挙戦を立て直す方向に向かいつつあるように思われる。
なお、ハリス氏は副大統領として国境警備などの問題でつまずき、これまであまり目立った成果はあげられていないが、最近は人工中絶の権利擁護キャンペーンの先頭に立ち、社会的弱者に関する問題への取り組みが高く評価されており、女性や若い有権者の支持を得ている。
■バイデン氏撤退は想定済みで、市場への影響は限定的、今後の情勢は民主党の選挙戦略次第
なお、バイデン氏の選挙戦撤退とハリス氏支持の表明は、市場では想定済みのシナリオで、直ちに大きな影響が生じることはないと思われる。
また、直近の各種世論調査の平均では、トランプ前大統領がハリス氏を2パーセントポイント上回っており(図表1)、トランプ氏優勢に変わりはない。
もちろん、今後の民主党の選挙戦略次第では、情勢が変化し、市場も大きく反応することが予想される。
仮に、ハリス氏が民主党の大統領候補となり、大統領選挙で勝利すれば、基本的には従来の民主党の政策に沿った政治が行なわれることになる(図表2)。
ただ、7月11日付レポートでも解説したとおり、米連邦議会選挙の結果、上下両院とも共和党が過半数の議席を占めれば、ハリス氏が政策を遂行する上では、議会の協力が必要となる事項もあり(税制改革など)、市場がこの「ねじれ」を懸念することも考えられる。
構成/清水眞希