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「ママラボ」は、消費の中心であるママとその家族の本心と向き合い、クライアントのビジネスや社会課題解決に役立つ提案をするワークタンクです。
ママラボでは、電通の大規模データベースを活用し、2014年と2022年におけるママの意識や価値観をさまざまなカテゴリで抽出し、比較分析を行いました(調査概要はこちら)。本連載では、2022年のママの中でも一番若い乳児を育てるママを「イマドキママ」と設定し、焦点を当てます。ママたちの自己意識・家族観、キャリア意識、食・健康観、買い物意識、メディア接触行動がこの8年でどう変化したのかを紹介。「イマドキママ」の現在地と、そんなママたちにマーケティング視点でアプローチするためのヒントをお伝えします。
「イマドキママ」を形成する社会的/世代的背景と、そこから生まれるママの自己意識と家族観について考察します。
松原 絵里花さん
株式会社 電通
第8マーケティング局 マーケティングプランナー
新しいママたちは、しなやかで強い
まず、「イマドキママ」を捉えるために、乳児を育てる人たちの中でも最も人口ボリュームの大きい30代前半にフォーカスし、彼女たちが育った社会的・教育的背景で大きく3つの特徴をピックアップします。
1.バブル崩壊の前後に生まれているため、物心がついた時から世の中が不景気だった。
2.「ゆとり教育」を体験しており、幼少期から「自分らしさ」が度々テーマになっていた(「世界に一つだけの花」がヒットしたのも、まさに中高生の頃!)。
3.学生時代にYouTubeやiPhoneが登場し、デジタルでつながり、シェアする文化の中心にいながら過ごしてきた。
このような背景から、「イマドキママ」の世代は、リスク管理意識が高く合理的で、自分らしさを子育てにおいても大切にする傾向が見られます。またコロナ禍に出産を経験した世代でもあり、子育てにおけるさまざまな“こうあるべき論”にもとらわれすぎない、しなやかな強さが見られます。
それでは、そんな「イマドキママ」を具体的なデータで見ていきましょう。
「女らしさ」<「自分らしさ」
ママたちの考え方を見てみると、「世の中の変化を柔軟に受けとめる方だ」が、2014年の乳児ママと比べて、10.6pt上昇しています。また、「さまざまな価値観を積極的に取り入れ、自分なりに楽しむ」が6.7pt上昇。変化の激しい時代において、柔軟性と自分らしさを持つことが、「イマドキママ」の気分にはあっているようです。
そんなママの「理想の自己イメージ」については、2014年と比べて「女らしさ」が7.0pt、「やさしい」が4.7pt減少しています。それに対して、「信頼できる」が15.5pt、「仕事のできる」が10pt、「おもしろい」が8.2pt上昇。女性の社会進出が進んでいることは周知の事実ですが、ママの自己イメージも、より社会性を意識した項目のポイントが上がっています。
また、「昔からあるもの、しきたりや常識などを大切にする方だ」は5.2pt減少する一方で、「自分の意志は尊重する」が8.0pt上昇。しきたりや習わしよりも、“自分の判断軸”を持っている様子がうかがえます。
「ママタレント」を見ても、杏さんや仲里依紗さん、すみれさんといった“自分の軸”をしっかりと持ちながら、変化にもしなやかに対応しているタレントさんが目立っていると感じます。
自己犠牲的な子育てより、「ワタシも楽しむ」時代
そんな「自分らしさ」を大切にする「イマドキママ」の意識で突出しているのが、人生観です。
「子どもがいるからといって、自分の楽しみを犠牲にするのはいやだ」のスコアが2014年と比較して21.9pt(!)も上昇しました。一方「子どもが小さいうちは、多少のことを我慢しても子育てに専念すべきだ」は17.8pt減少しています。
ママたちにとって「子どもがいても我慢したくない楽しみ」はさまざまですが、多くの票を集めたのが「推し活」次いで「おやつ・スイーツ」「読書(漫画含む)」でした。企業の広告宣伝でも、ママの推し活を応援する娘を描いたCMが話題になったのは記憶に新しいですね。
振り返るとママは多くの根拠なき「ママらしさ」という呪縛にとらわれてきました。お産は普通分娩で「おなかを痛めないといけない」、赤ちゃんは「母乳で育てないといけない」、離乳食やおかずは「手作りしないといけない」、夜は「子育て中の母は出かけてはいけない」など。「イマドキママ」は、これらの呪縛に「待った!」をかけ、自分と家族の幸せのために、本当に必要なことや大切なことを見極めようとしているのかもしれません。
「家族=チーム」
さて、そんな「イマドキママ」の家族観はどうなっているのでしょうか。
まず「重視している人間関係」を見てみると、「親」が8.9pt減少しているのに対して「夫婦」が3.4pt上昇しています。また、「友達より家族で行動するのが好き」も8.1pt上昇しており、以前よりも家族の結束が強まっている傾向が見られます。忙しい毎日を乗り切るために、「家族はチーム化」しているのかもしれません。
物事を決める時は「わが家基準」
また、家庭内の決め事については「夫が中心となって物事を決める」が4.2pt減少している一方で、「夫婦が相談しながら物事を決める」が3.5pt上昇しており、夫婦で一緒にものごとを決めている姿が見られます。
夫婦向けのコミュニケーションツールも多様化しており、従来はビジネスシーンで利用されていたツール(SlackやOutlookなど)を夫婦間で利用している様子も見られるようになりました。「イマドキママ」にアプローチするためには、ママだけではなくパパ、そして子どもみんなが使いやすく、共有しやすいUI/UX設計が良いのかもしれません。
「イマドキママ」にアプローチするための3つのキーワード
「イマドキママ」の自己意識と価値観は「自分らしさ」「自分の物差し・わが家基準」「夫婦や親子はチーム関係」という3つのキーワードにまとめられます。
改めてママの心をつかんだ広告やプロダクトを見てみると、この3つの要素を押さえているものが多く見られました。それはたとえばママの自分らしさを肯定していたり、ママだけでなくパパや子どもにとっても使いやすいデザインになっていたりします。
【調査概要】
データソース:電通d-campX 2014年/2022年実施調査
調査地域:関東圏
サンプル数:乳児ママn=310(2014年)/n=273(2022年)
※複数回に分割して聴取のため、n数は若干の変動あり
※こちらの記事はウェブ電通報からの転載記事になります