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無観客開催だった東京オリンピックの施設は今、どうなっているのか?

2024.07.26

3年前の無観客五輪を今、改めて思い出す

五輪使用の人工コースが自慢のカヌー・スラロームセンター(筆者撮影)

 2024年パリ五輪が26日(日本時間27日)からいよいよ開幕する。サッカー、ハンドボール、7人制ラグビーなどは一足先にスタートしているが、史上初の2大会連続兄弟金メダルが期待される阿部一二三・詩が出場する柔道、52年ぶりの金メダル獲得が期待される男子バレーボールなどの注目競技はここからが本番。欧州との7時間の時差もあり、8月11日の閉会式まで眠れない日々が続きそうだ。

 こうした中、ふと脳裏をよぎるのが、3年前の2021年夏の東京五輪だろう。

 新型コロナウイルス感染拡大によって2020年夏の予定だった五輪が1年延期となり、さらに無観客開催となったのは周知の事実だ。 開会式・閉会式が行われた東京・国立競技場周辺では、打ち上げられる花火を一目見ようと多くの人が集結。聖火台が設置された江東区・夢の大橋にも記念撮影する熱心な人々が押し寄せたが、三密回避のために厳重な警備体制が敷かれ、立ち止まることも注意されるなど、五輪ならではの華やかな雰囲気とは程遠いものがあった。

 未曽有の出来事ということで、やむを得ない状況だったのは間違いないが、五輪のために整備された施設にとってはアピールの場が失われたのは確か。3年が経過した今、東京五輪の会場はどうなっているのか…。2つの場所に足を運んでみた。

2021年夏の東京五輪開催時のお台場(筆者撮影)

カヌー・スラロームセンター(東京都江戸川区)

■葛西臨海公園駅から徒歩12分。都内から身近な水上レジャー拠点

 まず向かったのは、東京都江戸川区にあるカヌー・スラロームセンター。JR葛西臨海公園駅から徒歩12分という場所にある。同じく東京五輪のために親切された海の森水上競技場のように車でなければいけない施設とは違い、ここは電車から容易にアクセスできる。都心からも行きやすい施設と言っていい。

 ここでは2021年7月25~30日の6日間にわたってカヌー・スラローム競技が行われた。男子カナディアン・シングルの第一人者・羽根田卓也(ミキハウス)の2大会連続メダル獲得に期待が寄せられていたが、10位にとどまり、日本勢の躍進は叶わなかった。

 そして現在はカヌーのアスリート育成拠点と位置づけられ、水上競技の国際・国内大会も行われている。とはいえ、国内のカヌー競技人口は2022年時点で6000人。そこに目を向けているだけでは施設利用の促進は叶わない。

 そこで、同センターでは一般向けにラフティングやカヌー体験、水上遊具を使った子供向けレジャーの提供、トレーニング施設の開放などを行っている。ロッカー付き更衣室やシャワーもあるため、ランニングステーションとしての利用(1回・500円)も可能だ。

隣が葛西臨海公園の大観覧車だ(筆者撮影)

 確かにゲート1つで葛西臨海公園とはつながっているというのはメリットが大きい。朝9~17時に間なら、荷物を預け、自然いっぱいの公園を走ったり歩いたりして、シャワーを浴びてスッキリして帰れるという環境は都内ではなかなかない。猛暑の時期はできることなら気温の低い早朝オープンにしてほしいものだが、現状では9時スタートは変わらない様子。それも需要が高まってくれば、より柔軟な対応を考えていくのではないか。

 土日祝日(10~16時)には「カヌスラパーク」という子供たちが思い切り遊べるアクティビティも用意されている。イージーローラーやキックボードなどの遊具体験もあり、葛西臨海公園に来たついでに立ち寄るのもありだろう。子供たちが遊んでいる間に、大人はトレーニングジム(2時間420円)で筋トレに勤しんだり、五輪に使われた人工コースを眺めながら一息つくのもありかもしれない。

人工コースを見ながらトレーニングできる(筆者撮影)

 もっと本格的に水上体験をしたい人はラフティングをお勧めしたい。筆者も同施設ができた2019年に一度だけ体験したことがあるのだが、ウエットスーツを借りられるし、エキスパートのインストラクターの指導を仰ぎながら漕ぎ方を学んで、実際にコースに出られる。渓流を模した全長200m、高低差4.5mの水路に、毎秒12トンの水流が生み出される人工コースは凄まじい迫力。スリルと興奮の連続で、非日常を体験できる。

 ただ、気になるのは料金。6月まではラフティングツアー(120分)が6500円だったが、繁忙期の7~8月は7000円。8月限定のサンセットラフティングが8900円(同)と少し高くなっている。5年前の体験時が3500円(90分)だったことを考えると2倍の設定だが、全国各地のラフティングと比べてもそう高い設定ではないという。都心から気軽に行けるレジャーという意味ではありだろう。

「夏場であれば、会社帰りのバーベキューとラフティングをセットで売り出したり、キッチンカーを設置して飲食ができるようにしながらラフティングと公園散策と楽しんでいただくといったアイデアもあります」

 2019年時点で指定管理者の協栄の担当者はこう語っていたが、まだそこまでの多彩な企画やイベントの実施はないようだ。集客に関しては、ラフティングの方はまずまずの人気を博しているようだが、全体に空いている日が少なくない模様。筆者が赴いた23日の昼頃もトレーニングジムを使っている人が2人ほどいただけ。人工コースの方も競技者数人が練習しているだけで、閑散としていた。

 週末になれば、多少なりとも状況は変わるだろうが、まだまだ認知度が低いのは確か。「身近な水辺のレジャー施設」「気軽に使えるトレーニングジム」「普通とは趣の異なる子供たちの遊び場所」という観点では穴場的存在なのは間違いない。ファミリー層には、葛西臨海公園とセットで一度、足を運んでみることをお勧めしたい。

葛西臨海公園と行き来できるのはメリットが大きい。ぜひカヌスラパーク体験を(筆者撮影)

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