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漁夫の利は、二人の争いに乗じて第三者が利益を横取りする様子を指す。
本記事では、漁夫の利の由来や使い方を、簡単な例文を交えてわかりやすく解説する。類語や対義語も紹介するので、会話表現を増やすのに役立ててほしい。
漁夫の利とは
漁夫の利を見聞きしたことがあっても、具体的な意味や由来を問われると困ってしまう方も少なくないだろう。まずは例文を交え、漁夫の利の意味や使い方を確認しよう。
■漁夫の利の意味
漁夫の利は、二人が利益を求めて争っている間に第三者が労せず利益を横取りしていくことを指す。
争うことが両者の疲弊を招き、余力のある第三者によって双方が甚大な打撃を受けるという教訓を伝える言葉でもある。
■漁夫の利の例文
漁夫の利は、以下のように使われる。
【例文】
「派閥争いが激化するなか、中立を保った彼が評価され、漁夫の利を得たようだ」
「予想だにしないライバルの登場で、まんまと漁夫の利を取られた」
「余力を残していたことが功を奏し、彼は漁夫の利を占めた」
■漁夫の利の由来
漁夫の利の由来は中国の史書『戦国策』。かつて中国にあった国「趙」が「燕」に攻め込む計画を立てていたところ、以下のエピソードを用いて王に忠言をした人がいたという。
殻を開いているはまぐりを捕食しようと鳥のシギが襲い掛かったところ、はまぐりは殻を閉じてシギのくちばしを挟み込んだ。両者が動くに動けなくなったところで漁師がやってきて、はまぐりとシギはまとめて捕らえられてしまった。
これを聞いた趙の王は、今攻め込んだら双方が疲弊したところを第三勢力に強襲されると予想し、燕への攻撃を取りやめたそうだ。
漁夫の利の類語
漁夫の利の類語としては以下の言葉が挙げられる。
■犬兎の争い
犬兎(けんと)の争いは、争っている二人が疲弊したところで、第三者が労せず利益を手にすることを指す言葉。
漁夫の利と同じく『戦国策』のエピソードに由来しており、素早い犬が兎を追いかけまわし、双方が倒れたところを農夫が連れて行ったという寓話に由来する。漁夫の利とほとんど同じ意味で使える言葉だ。
■棚からぼたもち
棚からぼたもちは、予想しなかった幸運がやってくることを意味する。「たなぼた」と略されることもある。棚から落ちてきたぼたもちが、下で寝ていた人の口に偶然入ったことが由来とされている。
思わぬ利益を得る点が漁夫の利と共通する一方、他人が損失を被るとは限らない点は相違点として挙げられる。
■濡れ手で粟
濡れ手で粟は、苦労せず大きな利益を獲得することを意味する。穀物の粟を濡らした手で掴むと、触れただけでたくさんの粟粒が手にくっつく様子に由来する。
労せず利益を得る点が漁夫の利と共通する一方で、意図的に利益を狙う点は、漁夫の利と若干異なる。
漁夫の利の対義語
漁夫の利の対義語としては、以下が挙げられる。
■二兎を追う者は一兎をも得ず
二兎を追う者は一兎をも得ずは、同時に二つのものを手に入れようとしてどちらも失敗してしまうことを意味する。西洋古代に由来するといわれる。
漁夫の利は無欲さが利益を呼ぶニュアンスを含むのに対して、兎を追う者は一兎をも得ずは欲深さが失敗を生むことが教訓として示されている。
■虻蜂(あぶはち)取らず
虻蜂取らずも、二つのものを手に入れようとした結果、両方失敗してしまうことを意味する。二兎を追う者は一兎をも得ずとはほぼ同義のため、表現のバリエーションとして覚えておくと良いだろう。
漁夫の利の英語表現
漁夫の利は以下のように英語で表現できる。グローバルなシーンでも使えるよう、チェックしておこう。
■profiting while others fight
profiting while others fightは他人が争っている間に利益を獲得することを表す。「profiting」は「利益を得る」、「while」は「~の間に」、「others fight」は他者の戦いを意味し、漁夫の利とほぼ同じニュアンスで使用できる。
■fish in troubled waters
fish in troubled watersは混乱に乗じて利益を得ることを表す。「troubled waters」は荒れた海を指し、荒れた海で魚がよく釣れることが転じて、漁夫の利の意味を持つようになった。
■Two dogs fight for a bone, and the third runs away with it.
Two dogs fight for a bone, and the third runs away with it.は、漁夫の利とほぼ同義で使用されることわざ。二匹の犬が一本の骨を巡って争っていると、三匹目の犬がそれを持ち去ってしまう様子を表している。
※情報は万全を期していますが、正確性を保証するものではありません。
文/編集部