カナダのヒーローが憧れるヒーローは、日本の加納選手
そんなカナダ・フェンシング界のニューヒーロー、ニコラス選手が目標として憧れているのは、実は日本の男子エペ(フェンシングの種目の1つ)の選手たち。特に、2022年アジアチャンピオン、そして東京オリンピックの金メダリストでもある加納虹輝選手を尊敬しているという。
コーチのイゴー氏もまた、日本フェンシング界のコーチ陣から教えを受けたといい、「日本から学んだ多くのフェンシングの原則がニコラスのプレーに大きな影響を与えています」と語る。
日本のフェンシングから多くを学んだ、と話すコーチのイゴー氏とニコラス選手
「日本のフェンシングは世界でも最高のチームのひとつです。私たちカナダ人は日本が成し遂げたことを尊敬し、いつか彼らのような世界のエリートレベルに到達することを目指しています」。
そうイゴー氏は語り、日本人はもっと日本のフェンサーを誇るべき、と笑顔を見せる。
「夢をあきらめないで」。ニコラス選手からのメッセージ
「自分が今取り組んでいることを一生懸命にやれば、道はひらく」と語るニコラス選手
ニコラス選手が所属するクラブでは、多くの少年少女フェンサーが練習に励んでいる。
「自分が、あとに続く若い人たちのロールモデルやモチベーションになれたらいいな、と思っています」とニコラス選手は語る。後輩たちにかける言葉は、との質問に「みんなも夢をあきらめないで。自分を信じることをやめないで。誰もが世界の舞台に立てるんだ」と力強く語りかける。
ニコラス選手に続け! 同じ「ダイナモ・フェンシングクラブ」に所属する少年少女フェンサーたち。同クラブには数名の日本人留学生も所属している
「スポーツを通して心身を向上させ、さらには文化・国籍など様々な差異を超え、友情、連帯感、フェアプレーの精神をもって理解し合うことで、平和でよりよい世界の実現に貢献する」というのがオリンピックの基本理念。アジア系カナダ人として、コーチや仲間とともに熱戦を勝ち抜き、未来に向かうニコラス選手は、そんなオリンピズムを体現しているといえるだろう。
オリンピック注目の競技、フェンシング。
今後活躍必至の他国の若きホープにも注目して、競技をより深く楽しんでみてはいかがだろうか。ニコラス選手が出場するのは男子エペという種目。対する日本の男子エペ代表は、ニコラス選手が尊敬する加納虹輝をはじめ、前回の団体金メダルに貢献した見延和靖、山田優、リザーブに古俣聖と名選手が名を連ねていてこちらも好成績が期待される。パリ大会でもフェンシングが見逃せない。
文/佐知ゆりこ
カナダ在住。教育移住(マレーシア・カナダ)、小中学生の留学、海外旅行、女性の生き方などについての情報を発信。出版専門クラウドファンディング「Publish」ではカナダ留学中の現役中学生の書籍出版プロジェクト『純ジャパでカナダに留学してる中3だけど、なんか質問ある?』のプロデュースも手がける。世界100ヵ国以上の現地在住日本人ライターの組織「海外書き人クラブ」会員