米国で喉頭がん患者に対する喉頭移植が成功
Marty Kedianさんは長年にわたって声を失っていた。米マサチューセッツ州ヘイバーヒル出身のKedianさんは、まれなタイプの喉頭がんの治療のために何度も手術を受け、その結果、正常な嚥下機能と呼吸機能とともに声を奪われることになったのだ。
Kedianさんは、「私は生存してはいたが、生きているとは言えなかった。どこへ行っても人と話すのが好きなのに、それができなかった。違和感を覚え、どこにも出かけようとしなかった」と振り返る。普段から社交的なKedianさんにとって、それは全くあり得ないことだった。「私は、野球観戦で周りに座っている知らない人たちと、試合が終わる頃には友達になっているような人間なんだ」とKedianさんは言う。
ところが、米メイヨークリニックで受けた喉頭全移植のおかげで、Kedianさんは今では人当たりの良いおしゃべり好きに戻ることができた。Kedianさんは同クリニックで喉頭全移植を受けた初めての患者であり、米国でこの治療を受けた3人目の患者である。Kedianさんは移植手術の4カ月後には自力で話し、食べ物や飲み物を飲み込み、呼吸ができるようになったという。Kedianさんの移植手術に関する報告書は、「Mayo Clinic Proceedings」に7月9日掲載された。
Kedianさんは食べ物を飲み込みにくくなったことをきっかけに、2013年に医療機関を受診した。検査の結果、軟骨肉腫と呼ばれるまれなタイプの喉頭がんであることが判明し、医師からは手術が必要だと告げられた。その後、最初の手術が2014年に行われ、その後の10年間に何十回もの手術が行われた。これらの手術によって、Kedianさんの声はかすれ気味のささやき声に変わった。また、最終的に首の前の穴から呼吸ができるように、気管切開チューブが留置された。以前の主治医から、残る治療選択肢は喉頭全摘出術のみであると告げられたKedianさんは、メイヨークリニックに相談した。「私は喉頭全摘出術を受けたくなかったし、生活の質(QOL)を向上させる方法を見つけたかった」とKedianさんは当時のことを振り返っている。
Kedianさんの手術はメイヨークリニックの6人の外科医が担当した。外科医らは喉頭だけでなく、それに関連する全ての腺、血管、神経、気道に及ぶ手術を21時間かけて行った。手術では、まずKedianさんのがん喉頭を摘出し、ドナーから提供された移植片に置き換えた。
メイヨークリニックの喉頭・気管移植プログラムのメディカルディレクターであるGirish Mour氏によると、Kedianさんは以前、腎臓移植を受けて免疫抑制療法下にあったため、移植の良い候補者であったという。「活動性のがんで、すでに免疫抑制療法を受けている患者であることから、これまでほとんど行われたことのない方法で、追加のリスクを伴うことなく安全に移植を行うことができた」とMour氏は言う。
メイヨークリニック耳鼻咽喉・頭頸部外科部長のDavid Lott氏は、「Kedianさんはもともと持っていた声のほぼ60%を取り戻した。われわれは当初、ここまで回復するには少なくとも1年は必要だと考えていた。彼は今でもがんに罹患する前と同じ声と同じボストン訛りで話している」と話す。同氏はまた、「彼はまた、ハンバーガーやマカロニチーズなど、ほぼ何でも食べられるし、嚥下も問題なくできている。呼吸も徐々に改善している」と同クリニックのニュースリリースの中で説明している。今後、Kedianさんが自力で呼吸する能力を完全に取り戻した際には、気管切開チューブを取り外す予定だとLott氏は言う。
Kedianさんは来週、マサチューセッツ州に戻る予定だ。「メイヨークリニックとLott先生のおかげで、私はQOLを取り戻すことができた。私の今の仕事は回復することだ。その次の仕事は、ほかの人たちにも同じことができることを示すことだ」とKedianさんは話している。(HealthDay News 2024年7月10日)
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Photo Credit: Marty and Gina KedianMayo Clinic
(参考情報)
Abstract/Full Text
https://www.mayoclinicproceedings.org/pb/assets/raw/Health%20Advance/journals/jmcp/Lott-1720450777830.pdf
構成/DIME編集部