女性は男性よりも心停止後に不安や抑うつを抱えやすい
心停止から生還した女性は、男性の生還者よりも不安や抑うつに悩まされる可能性が高いことを、新たな研究が警告している。
論文の筆頭著者である、アムステルダム大学医療センター(オランダ)のRobin Smits氏は、「心停止から5年間の健康アウトカムに関するデータの解析から、女性では心停止後の最初の1年間に抗うつ薬を処方される可能性が50%以上も増加していたが、男性ではこのような増加は認められなかった」と述べている。この研究結果は、「Circulation: Cardiovascular Quality and Outcomes」に7月8日掲載された。
Smits氏らは、心停止の発生前と発生から5年後までの間の就業率、収入、家計の主要な担い手としての地位、不安・抑うつ(薬剤処方により評価)の変化について調べた。対象は、2009年から2015年の間にオランダ北部で院外心停止を起こし、30日以上の生存が確認された25歳以上の女性259人(年齢中央値51歳)と男性996人(同54歳)であった。
その結果、心停止発生前と比べて発生から5年後までに、就業率(女性:72.8%→53.4%、男性:80.9%→63.7%)と所得の中央値が減少していることが確認された。家計の主要な担い手であった者の割合は、男性では減少(77.8%→76.7%)していたのに対し、女性では増加していたが(22.5%→27.4%)、この増加は統計学的に有意ではなかった。一方、不安と抑うつに対する薬の処方は女性でのみ有意に増加しており、特に、心停止から1年後と5年後は処方のオッズ比が高くなっていた(1年後:オッズ比5.68、95%信頼区間2.05~15.74、5年後:同5.73、1.88~17.53)。
Smits氏は、「不安や抑うつに対する薬の処方になぜこのような性差が生じるのかを正確に理解するためには今後も研究を進める必要があるが、少なくとも、女性は心停止後に十分なサポートを受けていないことを示した結果だと言うことはできるだろう」と述べている。
Smits氏はまた、「心停止を経験した人では、就業率が大きく低下し、その結果、収入にも減少が生じていた。また、家計の主要な担い手としての地位にも変化が見られた。これらの結果は、心停止後に労働市場に復帰することの難しさを示唆している」と説明する。
一方、同じ対象者を用いて本研究グループがコペンハーゲン大学(デンマーク)と共同で実施した研究では、心停止後には女性の方が男性よりも長期にわたって生存することが示されていた。
Smits氏は、「これら2つの知見を組み合わせることで、心停止後の結果は性別により異なることが分かる。つまり、女性の方が心停止後の生存率が高く、その後も長く生きる可能性が高い一方で、精神的な問題を抱える可能性も高いということだ」と述べている。(HealthDay News 2024年7月9日)
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(参考情報)
Abstract/Full Text
https://www.ahajournals.org/doi/10.1161/CIRCOUTCOMES.124.011072
構成/DIME編集部