「BYD SEAL」の実力は充分、日本の高級セダン市場に受け入れられるか?
BYDとしては初の輸入セダンとなる「BYD SEAL」。
セダン自体の売れ行きが厳しい日本で、人気を得ることは可能でしょうか?
ポテンシャルは充分あると思われます。
直接のライバルとなるのは、テスラ「Model 3」でしょう。こちらのRWDモデルの価格は531万3000円。0-100km/h加速が3.1秒のパフォーマンス AWDは725万9000円となっており、価格的には勝算のあるレベルです。
また、BYDはディーラーネットワークの拡大を進めており、2024年6月末で55拠点のところを、2024年12月末までに全国90拠点に増やす予定です。
ネット通販が進む日本ですが、クルマは車両の登録も含めて、車検や整備などのアフターサービスが重要です。輸入車の場合は国産車以上に、アフターサービスが気になるものです。BYDは、そんな日本のクルマ事情も考慮して、ディーラー戦略を重視しています。
実際、BYD Auto Japanの東福寺社長も「『シール』が日本のセダン市場で勝算はあるかと聞かれると答えにくいですが、戦えるポテンシャルはある」と、発表会でコメントしています。
BYD Auto Japan 代表取締役社長 東福寺 厚樹氏
韓国のヒュンダイも含め、アジアのクルマメーカーにとって、日本のクルマ市場は販売のハードルが高い国です。そして、世界最大の自動車メーカーであり、ハイブリッド車の雄、トヨタの本国です。
一方、BYDは世界で累計700万台ものBEVを販売した中国の巨大メーカーですが、前述のとおり、日本では決して焦ることなく、販売拠点の整備から進めています。
日本自動車輸入組合(JAIA)が発表した、2024年6月の輸入車新規登録台数速報によると、BYDの6月の新規登録台数は148台で、前年同月比で159.1%の伸びを見せています。
また、1月からの累計台数は980台で、前年比で183.9%と大幅な伸びを見せています。
輸入車全体の6月の新規登録台数が、前年比91.8%と苦戦する中では、かなり優れた販売実績と言えるでしょう。
もちろん、輸入車新規登録台数トップのメルセデス・ベンツの6月の新規登録台数が5166台、2位のBMWが3853台であったことを考えると、まだまだ規模は小さいですが、ディーラーネットワークが拡大し、「BYD SEAL」の登録台数が今後伸展すれば、BYDの月間登録台数が1000台を突破するのも夢ではないかと思われます。
世界市場ではBEVの販売台数の伸びが鈍化していると言われています。その理由として、BEVの台数が急速に増えたことに対して、インフラの整備が各国で遅れたことも挙げられます。
その中で、日本におけるBYDの動きは堅実であり、「BYD SEAL」もまた、爆発的な販売台数というよりも、「気づいたら街で見かけることが増えたね!」と言われるような、売れ行きを示すのではないでしょうか。
商品の品質に厳しいとされる日本市場で認められることで、逆に世界でのBYDの評価を高めたい……そんなBYDの本気・熱意がこもった「BYD SEAL」の日本上陸。今後の行く末を見守っていきましょう。
取材・文/中馬幹弘