支持率70%で選ばれたデザイン
次にTakramのインダストリアルデザイナー中森大樹さんにお話を聞いた。
「ロボット用の椅子をデザインしたのは初めてですが、普段は家具、家電、カメラのレンズ、ハサミとか、あらゆるものをデザインしています。このプロジェクトは、もう1人のメンバーの河原香奈子がLOVOTオーナーで、食事の時に一緒に座れる椅子が欲しいという提案から始まりました。その後、カリモク家具さんとGROOVE Xと弊社の3社で話す機会があり、LOVOTのための椅子を作ろうという話になりました」
中森さんが見せてくれたのが、3Dプリンタで作ったという1/5サイズの椅子の試作品。その中の5点を選んでLOVOTオーナーに人気投票してもらった結果、7割の人が製品化された椅子のデザインを選択したという。
「LOVOTが球を2つ重ねた形をしていたので、椅子も球体を切り取ったような形を選びました。LOVOTが座っていないときも、その存在を感じさせるようなデザインにしています。おしり部分の穴は排熱効果もありますが、見えると可愛いねという理由で付けました。これでLOVOTを椅子のセンターにきちんと座らせる効果も得られました。センサーが増えた3.0にも対応しています」
Takramのプロジェクトチームのプロダクトデザイン担当、中森大樹さん
塗装は手仕上げ、耐久性は孫の代まで
椅子の制作を担当するカリモク家具 事業開発部 部長 伊串直恭さんにもお話を聞いた。
「我々のグループミッションに『木とつくる幸せな暮らし』というものがあります。木の良さが伝わるような活動、その意味からも今回、非常に素晴らしいコラボレーションになったと思います。以前からLOVOTのこともよく知っていたし、椅子は専門分野ですから、工場の人間もみんな楽しんで作りました。素材はナラかクリが最終候補に残り、今回はクリを選びました。軽くて木目の美しい木材です」
LOVOT CHAIRは受注生産だが手作業で作られるのだろうか?
「ハイテク&ハイタッチという製造コンセプトのもと、モノ作りをしています。『LOVOT CHAIR』は複数に分かれたパーツを機械(ハイテク)で削ってダボ継ぎと接着で組み立てています。その後、表面を研磨して塗装しますが、これらは職人の手作業(ハイタッチ)でおこなわれています。特に塗装は木目を活かした仕上がりにするため、1つ1つ、その木の個性に合わせた研磨、塗装を施していきます。耐久性は倒して壊したりしなければ30年、40年、孫の代まで使っていただけると思います」
LOVOTの顔の色と合わせて、椅子にも4色のカラーが用意された
写真・文/ゴン川野