■連載/阿部純子のトレンド探検隊
ヤッホーブルーイングらしいユーモアを交えた適正飲酒への取り組み
今年2月に厚生労働省が「飲酒ガイドライン」を公表し、適正飲酒への関心が高まる中、ビール業界も様々な取り組みを行っている。
「よなよなエール」で知られるクラフトビール大手ヤッホーブルーイングでは、2022年にアルコール度数0.7%の「正気のサタン」を発売。ビールを中心としたエンタメ事業を展開する同社は、お酒に強くない人向けの微アルイベントの開催や、主催イベントでは飲み放題を順次廃止している。
また、1年間縛りとなるサブスクリプションの年間コースを廃止。1か月ごとの支払いになり、コース変更や解約を2回目以降自由にできるようにし、配送スキップも新たに設けた。
適正飲酒を通じた、ウェルビーイングの取り組みを拡大していく中で、ヤッホーブルーイングらしい新たな発想で生まれたのが「ゆっくりビアグラス」だ。
「飲酒ガイドラインが公表されてから、ビール、アルコールメーカーが、重苦しい雰囲気になっています。業界としては国のガイドラインを受け止めつつも、積極的に発信しにくい空気がある。聞かれたら『啓蒙活動に邁進します』とコメントを出しますが、それでいいのかな?と私は思っていました。
我々としては、お酒が悪者になるのもよくないと思っていますし、適正飲酒をして健康に気をつけながら飲んでもらいたいとも思っています。でも実際は、飲酒ガイドラインの存在を知らない人が8割近くいるわけです(ヤッホーブルーイング調べ)。
ビールを中心としたエンタメ企業として、重いテーマでも楽しくユーモアを込めながらみなさんに知っていただき、適正飲酒をしてもらいたいという発想で『ゆっくりビアグラス』ができました。
期間限定で、飲食店で体験していただけますが、これ、本当に飲みにくい!でもね、『飲み過ぎないようにするにはこういう飲み方がいいんだよ、お前知ってるか?』みたいに先輩風吹かせながら語る人が増えてくるかもしれない。笑いながら適正飲酒を伝えていきたいなと考えています」(ヤッホーブルーイング 代表取締役社長 井手直行氏)