ビザ・ワールドワイド・ジャパンは2024年7月11日、VisaのAIと決済に関するブリーフィングを実施。これまでのAIの取り組みと共に、将来のAI活用における方向性についても示した。
ブリーフィングに登壇したコア・プラットフォームソリューションズ 部長 田中俊一氏(右)とコンサルティング&アナリティックス 部長 クリストファー・ビショップ氏(左)。
Visaの約30年間に渡るAIの取り組み
ブリーフィングでは、まず「VisaのAIへのこれまでの取り組み」について、田中俊一氏が説明した。
Visaは1993年に決済ネットワークとしては初めて、不正検知モデルを利用したAIを紹介した。2013年以降、予測型のAIを用いたイノベーションが加速し、より複雑なモデルへと展開。2023年以降は生成AIを用いたプロダクトに移行。今後、さらにAIに注力していく考えだ。
これまでの約30年間に渡るAI活用において、Visaは300以上のAIモデルを開発し、100以上のプロダクトが世界中で活用されている。社内の開発者数は50ユーザーから550ユーザー規模に拡大。クレジットマスターアタック(カード情報の不正入手)に対応するAIモデルをはじめ、カード利用者の海外旅行先の予測、よりスマートなアカウント確認、直近ではリアルタイム決済向けの不正検知モデルなども紹介する。
このようなVisaのAI活用ソリューションでは、不正検知や不正管理などを行なう“セキュリティ”、カード会員や加盟店がより良いユーザー体験やサービスが受けられる“利便性”、Visaのイシュア(クレジットカード発行会社)やアクワイアラ(加盟店管理会社)が業務を効率的に行なえる“業務効率”を、開発の三本柱として掲げる。
プロダクトの例として紹介された、イシュア向けの「VCAS (Visa Consumer Authentication Service)」というプロダクトは、VisaのAIモデルをグローバルの不正検知に活用。リスクの高さを1~99の数字で提示することで、不正取引の判断がわかりやすいモデルにした。
また「EMV3Dセキュア」というプロダクトは、加盟店からイシュアに送る多くのデータをAI活用することで、正確かつ短時間な処理を実現。決済時間が85%短縮し、カートに商品を入れたものの購入まで至らずに離脱してしまうカゴ落ちを70%減少するなど、目に見えた成果を表す。
これまで約30年間、Visaのネットワークで活用されている機械学習のAI「VAA(Visa Advanced Authorization)」では、現在では年間280億ドルの不正取引を削減し、約1ミリ秒あたり500以上のデータ取引を処理するなど、素晴らしい進化を遂げている。
これらのプロダクトにおいて田中氏は、「安全性が高いこと、世の中に貢献できるAIプロダクトを提供すること、高い水準のデータガバナンスを維持することが3つの大きな使命だと思っています。AIにおける決済のリーダーとして、今後もAI活用を進めていきたい」と意気込みを語った。