クロス・マーケティングが2024年2月22~25日に行なった全国の20~69歳男女を対象としたインターネット調査によると、全体の20%が何らかの推し活をしているらしい。
「推しの対象」は「アイドル」(33%)が最も多く、次いで「漫画・アニメ・ゲームのキャラクター」(26%)、「ミュージシャン」(25%)の割合。推し活をしていて感じることの1位は「自分自身への癒しとなる」(56%)、以下「ストレスが解消される」(47%)、「推しに会いたい・直接見たい」(41%)が続いている。
かくいう私も、推し活をしている20%のうちの1人。姪を誘って、おばと姪の2人でラグビーの熱狂的な推し活をしている。
代表戦、リーグ戦に関わらず、ラグビーの試合には多くのファンが集まる
「ラグビーブームは去った」は勘違い!すごいことになっている〝ラグビー推し活〟
ラグビーワールドカップ2019日本大会開催から5年が経ち、「ラグビーブームはすでに去ったのでは?」と感じる人もいるかもしれない。けれども今、ラグビー推し活はすごいことになっている。
2023-24のシーズンでは観戦のチケットが完売するゲームが続出。ある試合では、キックオフ1時間前にチームグッズのすべての商品が売り切れてしまったという事態も発生。あまりの盛況ぶりにオールドファンは多少、気後れしているほどだ。
シーズン中の記録を更新した第10節のトヨタヴェルブリッツ対東京サントリーサンゴリアス戦の入場者数は3万4500人。2023-24プレーオフトーナメント決勝の埼玉パナソニックワイルドナイツ対東芝ブレイブルーパス東京戦が歴代最多入場者数で5万6000人だった。
サッカーJ1リーグ屈指の人気を誇る浦和レッズの2024シーズンの平均入場者数は3万7000人(2024年7月7日現在)だから、その凄さはデータ上でも理解してもらえるだろう。
なぜ今、ラグビーが熱いのか
ではなぜ今、ラグビーが熱いのか。
■理由1:海外のスター選手が日本で見られる
理由の一つは、海外の有名選手が日本のリーグに参戦するチームに多数所属していること。昨年開催されたラグビーワールドカップ決勝のカードは、ニュージーランドの代表チーム「オールブラックス」と南アフリカの代表チーム「スプリングボクス」だが、それぞれのスター選手は日本の「リーグワン」のチームでプレーしている。
サッカーで例えるなら、メッシとエムバペなど、アルゼンチンとフランスのスター選手が毎週日本でプレーしているようなものだ。ちょっとでもラグビーを知っている人なら、一度は観戦したいと思うはず。
■理由2:選手とファンの距離がとにかく近い
また、彼らのファンサはすごい。試合の勝敗に関わらず、試合後は観客に笑顔で手を振ってくれるし、ピッチから早めに引き上げたりはしない。さらに機会があれば、快くサインをしてくれたり、ツーショットの写真に応じたりと驚くほどファンを大切にしてくれる。
キックオフ前にはチームマスコットともツーショット写真が撮れる。写真は三菱重工相模原ダイナボアーズのマスコット、ダイボ君
リーグワンに所属する各チームもラグビー人気を盛り上げている。例えば、選手の名前が入った応援用タオルやフラッグ、アクスタ、バッグ、防寒具、ステッカーなどの販売は、サッカーや野球などのプロスポーツチームにも引けを取らない。
ホストチームは先着順に限定で法被やシャツ、人気選手のボブルヘッドフィギアが配られたりもする。ゲームに出ない選手が出てきてサインをしたり、一緒に写真を撮ってくれたり、パスやキックを取り入れたゲームを一緒に楽しんだり。
ラグビーのおもしろさに加え、とにかく選手が近く、ファンでなくてもなんだか心踊る雰囲気がある。
姪とおばの推し活事情
私の推し活はいつも姪と一緒。リーグワンの試合が開催される12月から5月の週末はほぼどこかのスタジアムで観戦をしている。
雨の日はレインコート、晴れの日は帽子を持参して観戦に出かける。試合のカードに合わせた応援グッズは必須
東京、横浜、相模原、柏、熊谷などの東京近郊から、仙台、大阪、静岡、長崎などへ遠征することもある。旅行感覚で移動時間や現地での食事も十分に楽しめるし、何より姪を相手に気を遣うことはない。ずっと2人でラグビーについて話をしている。
■実は奥が深いラグビーの推し方
ラグビーの推し活と一口に言っても、ほかの推し活のように、いろいろな推し方がある。
姪とおばの推し活は基本的にポジション推し。私は10番のスタンドオフ、姪は9番のスクラムハーフ推しだ。
10番のスタンドオフは、チームの司令塔として、ボールを受け取った後の攻撃を判断してゲームメイクを行なう役割を担当するポジション。日本では先日、トヨタヴェルブリッツへの入団が発表された松田力也選手、コベルコ神戸スティーラーズの李承信選手、そして私の推し、横浜キヤノンイーグルスの田村優選手と小倉順平選手が有名どころだ。
9番のスクラムハーフはフォワードとバックスを繋ぐパスのスペシャリスト。日本では先日、フランスリーグへの移籍が発表された斉藤直人選手や東京サントリーサンゴリアスの流大選手、今期で現役を引退した田中史朗選手などで知られる。
■最推しの丸山凛太朗選手との苦い思い出
中でも私の一押しは次のシーズンから花園近鉄ライナーズでプレーする丸山凛太朗選手。彼を〝ファンタジスタ〟と呼ばせるプレーには目が離せない。
2023-24シーズンは初戦でケガをしてしまったこともあってか、丸山選手がファンサービスでスタジアム周辺に出てくる機会に遭遇することがあった。
おばはとにかく丸山選手を応援する気持ちを伝えたいという思いで、姪と一緒にファンが作る列に並ぶが、一歩ずつ列が進むにつれ、ドキドキが止まらなくなる。順番がまわってきた時には緊張で、まともに話もできず、ガチガチの表情でツーショット写真に収まることに。姪の「はーい、写真とるよ!笑って」という絶妙な声がけアシストもほぼ役に立たずだった。
■チーム推しではないがゆえの楽しさと大変さ
また、姪とおばの推し活はチーム推しではないので、あちこちのチームを応援することになる。そのため一番辛いのは、推しの選手がいるチーム同士の対戦だ。応援はフラッグやタオルなどのグッズを片手に、大声で叫ぶという基本的なスタイル。
ただし、たくさんの試合を見ていると、9番や10番以外にも推しの選手は現れる。三菱重工相模原ダイナボアーズの坂本侑翼選手や東京サントリーサンゴリアスの垣永真之介選手、クボタスピアーズ船橋・東京ベイの木田晴斗選手などなど挙げるとキリがない。
最近では、常にどちらを応援するか2人で悩んでいるし、つい逆のチームを応援してしまうこともある。
グッズの購入は推しの選手を応援することにつながるので、大変な数になる。アクスタはもちろん、バッグ、マグカップ、キャップ、チームマスコットのぬいぐるみなど自宅に保管するのも苦労しているが、これを愛でで楽しむのも大切な推し活だ。
■姪の推し活が大変なことになっていた!
姪と2人の推し活はおば冥利につきるのだが、ある時から姪の熱量は急におばのそれを超えていった。姪は有名選手のトークイベントやラグビー教室などに、1人で参加するのだという。
また、姪の一押し選手はNECグリーンロケッツ東葛の9番、藤井達哉選手。2人で最初に行ったラグビーの試合で、その視野の広さと動きの機敏さに感激した選手で、姪は藤井選手が出場する、しないに関わらず、1人でチームの追っかけをしているようだ。
その範囲は鈴鹿や気仙沼、鹿児島なども含み、日帰りできない場所もある。
姪の部屋にある癒しのスペース。これを見ると、気持ちが落ち着くのだそう。
一般に公開されていない試合を観るために、多くのリーグワン所属チームのファンクラブに入会してもいるようだ。年会費だけでも結構いい金額になりそうだが、まったく気にする気配はない。
今年の1月にはとうとう、大型のミラーレス一眼を購入。試合中はシャッター音を響かせている。今までカメラには興味がなかったので撮影センスは壊滅的にないが、楽しければそれも良し。ただ、連写すれば1枚くらいは感動シーンが撮影できるとのこと。とっておきの画像はSNSで本人に送るのが楽しいらしいが、姪のバイタリティには驚くばかりだ。
あるラグビーの試合では、多くの人から声をかけられている姪。みんな、ラグビー場で仲良くなったファン仲間らしい。「あら、今日はおばさんを付き合わせているの?おばさんも大変だね」と言われたりもしている。もはや、姪とおばの立場は逆転してしまった。
姪は、各チームの主要選手はほぼ頭に入っているし、試合をジャッジするレフリーの動きで状況を把握できている。試合を観終わった後は、再度、解説を聞きながら動画で復習しているようで、その情報収集能力もすさまじい。
さらにすごいことに、姪は1人でパスやキックなどラグビーの自主練をしている。スポーツとはまったく縁遠い生活をしていたので、おばはその姿を観て笑うしかないのだが、彼女はかなり本気だ。
そう、推し活にはここまで人を突き動かす不思議なパワーがあるのだ。
残る80%に届けたい「推し活のすすめ」
三井住友フィナンシャルグループのCMで、岡崎体育が浴槽につかりながら、「生きていてよかった」と叫ぶ。ラグビー推し活とはそんな感じだと私は思っている。
姪はそんなおばのラグビー推し活に誘われ、最初はひまつぶし程度で観戦し、おばと同じ思いで、どんどんその沼にはまっていった。しかも、おばよりも深い沼にだ。
そこで私は、現在推し活をしていない80%の人に言いたい。
推し活はいろいろなところに潜んでいて、いつその沼にハマるかはわからない。でも、もしハマったのなら、ぜひその沼に一度溺れてみてほしい。
毎日が見違えるほど楽しくなるから。「ああ、今日も生きていてよかった!」
文/内山郁恵
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