2022年4月に不妊治療の保険適用が開始されて2年が経過した。妊娠を望むカップルの不妊症の疾患認知から受診、治療までの時系列での行動、心理状況は、保険適用の前後でどのように変化したのだろうか。
フェリング・ファーマは、日本の不妊治療患者カップルを対象に、「保険適用前後における不妊患者の受診行動に関する調査 <EUREKA Family 2>」を実施したので、概要をお伝えしよう。
フェリング・ファーマは同様の調査を2022年2月にも実施しており、今回の調査は不妊治療が保険適用となって以降後、同じ質問票を用いた初めての調査となる。
不妊症と診断された人が子どもを持つという決断から妊娠までの平均期間は保険適用前よりも短縮、挙児希望率も向上
ペイシャントジャーニーの時系列(医療サービスを受けるプロセス)
夫婦が子供を持つという決断をしてから妊娠に至る病院へ受診するまでの総平均期間は、保険適用前(2022年2月実施)の6.4年から保険適用後(2024年1月実施)では5.9年に短縮していた。
不妊と診断されるまで、不妊と診断されてから治療を開始するまでの期間は短縮した一方で、不妊治療後、妊娠に至った患者の平均治療期間は約1.9年から約2.5年となり、保険適用後に期間が延長していることが判明。
保険適用により不妊カップルの挙児希望(=子どもを持ちたいという願い)の思いはより強まり、初回受診後においても積極的に治療開始に進む傾向がみられた。
保険適用が不妊治療に及ぼす影響を聞いたところ、大幅に改善されたことトップは「費用負担」となった。一方、待ち時間や提出書類に関しては悪化していることが判明。
不妊治療において改善の余地があることについて「不妊治療がもたらす感情的な影響について理解すること」と答えた割合が保険適用前後ともに最も多くなっていたが、保険適用後は「不妊症や不妊治療が社会にもっと受け入れられること」「職場・雇用者のより良いサポート、理解が得られること」と答える割合が増加しており、より周囲からの理解やサポートが望まれていることがうかがえる結果に。
保険適用前後において不妊治療患者の基礎知識に大きな違いは認められなかったが、AMH値についての問いに対する正答率は32%で、3分の1はAMHを知らなかったと回答していた。
まとめ
今回の調査で、不妊症と診断された人が子どもを持つという決断から妊娠までの平均期間は約5.9年と、前回調査の約6.4年から約6か月短縮されていることが判明。
一方で、不妊治療後、妊娠に至った患者さんの平均治療期間は保険適用前で約1.9年、保険適用後で約2.5年であり、保険適用後において期間が延長していた。
また不妊治療の保険適用が及ぼす影響としては、費用負担が大幅に改善されたと回答した人が約50%で1位であったが、残りの半数は変化なし、あるいは大幅に悪化したと回答している。
加えて、不妊治療において改善の余地のあることは何かという質問に対しては、周囲に対して理解やサポートを望むとの回答割合が増え、治療の経済的な負担はもちろん、職場などにおける周囲の理解不足など、依然として課題が残っているようだ。
2024年6月からは一般不妊治療の患者さんにもAMH*検査が保険適用されるようになるなど行政の対応も進んでいるが、社会全体として妊娠・出産や不妊治療について適切な知識を持つことで不妊症患者の早期受診や適切な治療が促され、不妊治療における妊娠率向上につながると考えられる。
*AMH:anti-Müllerian hormone、抗ミュラー管ホルモン
調査概要
保険適用前後における不妊患者の受診行動に関する調査 - Web定量アンケート-
内容:不妊治療に関する意識調査
実施方法: 自己記入式のオンラインアンケート調査
調査地域: 日本
調査対象: 臨床的に不妊と診断された20~50歳の女性(患者) 113名
パートナーが臨床的に不妊と診断された18歳以上の男性 87名
2022年4月時点で不妊治療が終了していない方を対象とする
調査時期:2024年1月
内訳:
(1)「検討中」 不妊治療を検討している:44名
(2)「IVF*以外」 IVF(体外受精)以外の不妊治療を受けた/受けている:52名
(3)「IVF」 IVF(体外受精)を含む不妊治療を受けた/受けている:104名
*IVF:in vitro fertilization(体外受精)
関連情報
https://www.ferring.co.jp/
構成/Ara