エコデザイン規則
2019年に成長戦略「欧州グリーンディール」を掲げて以降、EUは苛烈な環境政策を連発している。今年4月、欧州議会で最終法案が採択された「エコデザイン規則」もそのひとつ。EU域内で製造・輸入・販売される家電などに対してエネルギー効率基準を定めた「エコデザイン指令」を改訂・厳格化したもので、食品、医療品などを除く幅広い製品、中間材へ対象を拡大。修理、リサイクルなど環境要件を求めるとともに消費者へ情報開示を義務づける。
早ければ今夏頃に施行される見通し。その後、製品分野や各種要件の検討開始となるが、すでに一部アパレル企業は大揺れの状況だ。日本企業の海外展開支援などを行なうJETROの土屋朋美さんが話す。
「再利用可能な服の廃棄を禁じる法案が合意されたことが大きい。EU域内の年間衣料品廃棄量は1260万t超。再利用されるのは22%で、多くは第三国へ輸出され、埋め立てや廃棄されるファッション汚染が問題視されています」
台頭する越境ECへの牽制も。
「特にフランスはファストファッション罰則法案など積極的。環境経済的に公平な製品を増やして繊維産業に手を差し伸べるという狙いも感じられます」(土屋さん)
「エコデザイン規則」は消費者にとってサステイナブルな製品を当たり前にする施策だが、事業者にとっては防波堤にすぎない。衣類本来の価値を高める競争の加速に期待したい。
ガーナは世界有数の古着の集積地。廃棄された衣料品は環境汚染やマラリアを媒介する蚊の温床に。
取材・文/渡辺和博