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なぜ右肩上がり?成長し続ける宅食市場で起こっている「ある変化」とは

2024.07.19

「宅食」関連の市場が拡大している。

パンデミック前まで、宅食といえば「高齢者向けサービス」というイメージが根強かった。それがパンデミック期の巣ごもり需要を経て、旧来のイメージを打破することに成功したようだ。今では一人暮らしの若者やファミリー層までもが気軽に宅食を利用するようになった。

この記事では、「多様化する宅食サービス」について解説していきたい。

成長し続ける宅食市場

弁当や惣菜、定食キットなどを自宅や職場に配送してくれるサービス、それが宅食である。

日本では、中小零細の弁当販売店がそれに似たサービスを展開することはあった。しかし、大手食品メーカーがBtoCの配達サービスを実施する例は決して多くなかったはず。それが最近では状況が変化し、大手もこぞってBtoC宅食サービスを大々的に行うようになっている。

株式会社矢野経済研究所が2023年9月に配信した調査記事には、このように書かれている。

2022年度の食品宅配市場規模(主要8分野合計値)は、事業者売上高ベースで前年度比102.3%の2兆5,363億円と推計した。コロナ禍で宅配需要が急増した2020年度以降の同市場は、国内人口の減少および少子高齢化の進行で概して国内の食関連市場が縮小傾向にあるなか、成長を持続している。一方で、成長率については2020年度以降はコロナ禍以前の水準に戻っている。

成長率はパンデミック期より鈍化してはいるものの、2027年の市場規模予測も含めて右肩上がりのグラフを保っているということは該当記事を読めば明らかである。

「高齢者向けサービス」というイメージを打ち破る

矢野経済研究所の該当記事には、さらにこう書かれている。

少子高齢化や女性の社会進出といった社会的要請を受けて、食品宅配サービスは年々その重要性を増してきた。食品宅配市場はコロナ禍での需要の高まりにより2020年度に市場が急拡大したため、その後の反動減が心配されたが、主要8分野のうち多くの業態で需要は高止まりしている。コロナ禍は食品宅配サービスが消費者の日常生活に根付くきっかけとなったといえる。但し、商品やサービスの拡充により、異業種間のみならず業態間の競争も激化している。

「コロナ禍は食品宅配サービスが消費者の日常生活に根付くきっかけとなったといえる」というのは、要するに「宅食=介護の必要な高齢者向けサービス」というイメージを打ち破ったことを示しているのではないか。

筆者自身、単語としての「宅食」が包括するイメージの変化を強く感じ取っている。10年前は祖母、そして今は伯父が要介護者になり、そのために母が宅食サービスとの連絡を日常的に行っているからだ。しかし、今や首都圏では健康体の若者も宅食サービスを利用していると@DIME編集部から聞き、つい驚いてしまった。

改めて調べてみると、宅食サービスを手掛ける各大手メーカーは20~30代の若年層を強く意識した商品を続々と開発している事実が窺える。

『完全メシDELI』公式サイトより引用

まずは日清食品の『完全メシ DELI』を取り上げよう。これは丼物、カレー、麺類、ピザなどを豊富に取りそろえた冷凍食品シリーズで、管理栄養士と共同で開発したことでも知られている。宅食サービスだから、もちろん定期購入プランも用意されている。

『nosh』公式サイトより引用

続いて、ヘルシー・糖質への配慮といった健康志向が特徴の『nosh(ナッシュ)』。自社工場で作られた冷凍弁当が自宅に届くシステムだ。それだけでなく、オフィスに導入される事例もあると聞くから、働きざかりの世代にウケていることがわかる。


『Kit Oisix』公式サイトより引用

また冷凍食品の利点は電子レンジで温めればすぐに食べられることだが、それとは逆に食材が丸のまま届く宅食サービスも。オイシックス・ラ・大地株式会社のミールキット『Kit Oisix』は、何とカット野菜等の食材と調味料、そしてレシピが梱包されている。しかしこれは、「面倒なことはしたくないけど自分で調理したい」と考えている人に最適のサービスでもある。

一口に「宅食」といっても、今や様々な形態が存在し、各世代のニーズに対応しているのだ。

「もったいない」もひとつのニーズ

冷凍やミールキットなどの種類に限らず、宅食は「食品・食材を買い過ぎない」という利点もある。

管理栄養士が監修しているということは、カロリー計算もちゃんとしているという意味。従って、個々の商品に表示されているカロリーを見れば、それが自分にとって適切な量かそうでないかが一目で分かる。

筆者自身、「食べ切れずに余らせてしまう」のが嫌で、食事も「多めに作る」ということを一切しないタイプ。何かしらの理由で飲食店で食べ物を残してしまったら、その後丸1日は嫌悪感に苛まれてしまうほどだ。

そうした「もったいない」という心情も、ひとつのニーズである。やや主語が大きくなってしまうが、宅食の普及は廃棄食料の現象につながるのではないかとも感じる。

宅食サービスは、2020年代の日本人のライフスタイルをはっきりと映し出しているようだ。

【参考】
矢野経済研究所
日清食品
nosh
オイシックス・ラ・大地

取材・文/澤田真一

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