地中海食はがんサバイバーの寿命を延ばす?
地中海食は、がんサバイバーが心臓の健康を維持し、長生きするのに役立つことが、イタリアの研究で示唆された。ウンベルト・ベロネージ財団(イタリア)のMaria Benedetta Donati氏らが800人以上のがんサバイバーのデータを分析したこの研究の詳細は、「JACC CardioOncology」に7月2日掲載された。
地中海食は、新鮮な果物や野菜、全粒穀物、種子類、ナッツ類、豆類、オリーブオイルを多く摂取することに重点を置いた食事法である。この食事法では、魚介類の週2回以上の摂取、乳製品および脂肪分の少ないタンパク質を毎日少量摂取することを推奨している。
この研究では、イタリアの35歳以上の成人2万4,325人を対象にした研究(Moli-sani試験)のデータから抽出された802人(平均年齢63±12歳、女性59%)のがんサバイバーを対象に、地中海食の摂取と死亡リスクとの関連が検討された。対象者の食生活は、診断後、平均で8.8±8.3年にわたり調査されていた。また、試験参加前12カ月間の食生活は、インタビュアーにより実施された半定量的食物摂取頻度調査により評価されていた。地中海食の遵守度については地中海食スコアを算出し、0~3点(遵守度が低い)、4~5点(平均的な遵守度)、6~9点(遵守度が高い)の3群に分類した。
その結果、地中海食スコアが2ポイント上昇するごとに全死亡リスクは16%(ハザード比0.84、95%信頼区間0.71~0.99、P=0.038)、心血管疾患による死亡リスクは31%(同0.69、0.49~0.97、P=0.032)、有意に低下することが示された。がんによる死亡リスクについては、有意な低下は認められなかった(同0.91、0.73~1.12、P=0.37)。また、地中海食の高い遵守度は、全死亡リスク、特に心血管疾患による死亡リスクの大幅な低下と独立した関連を示し、低い遵守度を1とした場合のハザード比は、全死亡で0.68(95%信頼区間0.46~0.99)、心血管疾患で0.42(同0.19~0.93)であった。
こうした結果を受けてDonati氏は、「この結果は、がんや心血管疾患などの異なる慢性疾患が、実は同じ分子的メカニズムを共有していることを示唆するものだ」と述べている。同氏はさらに、「このメカニズムは、これらの疾患に共通する基盤と考えられており、文献上では『共通の土壌(common soil)』と呼ばれている」と説明する。
研究グループは、「治療法の向上により、がんサバイバーの数は今後増加することが予想される。そのため、良い食事法が、がんを克服した人の健康とウェルビーイングをいかに改善し得るかを理解することは極めて重要だ」と述べている。
ウンベルト・ベロネージ財団の科学委員会会長であるChiara Tonelli氏は、同財団のニュースリリースの中で、「この研究では、地中海食に心血管疾患による死亡リスクを低下させる効果のあることが示された。この結果は、地中海食が果物、野菜、オリーブオイルなど、抗酸化物質の天然供給源となる食品で構成されていることから説明できる可能性がある。心血管疾患による死亡リスクは、地中海食のような生物活性化合物が豊富な食事法により低下する可能性があるからだ」と述べている。(HealthDay News 2024年7月3日)
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(参考情報)
Abstract/Full Text
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2666087324002084?via%3Dihub
構成/DIME編集部