年代別の優先例
新NISAとiDeCoのどちらを優先すべきかは、年齢によって異なります。
20代・30代の若年層は、ライフイベントが多く控えているため、新NISAを優先すると良いでしょう。新NISAで貯めた資金は、結婚や出産、住宅購入など、様々な用途に使うことができます。また、若い世代は投資に対するリスク許容度が高い傾向があるため、新NISAのように多様な投資商品にアクセスできる制度は非常に魅力的です。
例えば、20代のうちから新NISAで投資を始めることで、時間を味方にした複利効果を最大限に活用し、資産を大きく成長させることができます。
さらに新NISAは生活の変化に柔軟に対応できる点が魅力です。若い世代は結婚や出産、住宅購入といったライフイベントが多く、急な出費が必要になることもあります。新NISAであれば、資金を必要なタイミングで引き出すことができるため、安心して投資を続けることができます。
一方、40代・50代は、ある程度ライフイベントを経験し、老後資金を貯める時期に差し掛かるため、iDeCoを優先することを検討しましょう。この時期は年収が高くなり、納税額も増えるため、iDeCoの節税効果が大きくなります。
特に50代は年収がピークに達することが多く、節税効果を最大限に享受することができます。
これにより、老後の生活資金を効率的に蓄えることができるでしょう。
また、iDeCoは長期的な資産形成に非常に有効です。老後資金を計画的に貯めることで、リタイア後の生活を安心して迎えることができます。
例えば、40代でiDeCoを開始し、毎月2万円ずつ積み立てると、20年間で480万円の積立金となります。さらに運用益が加わるため、老後の生活資金として大きな金額を確保することができます。
iDeCoの年収別節税効果
iDeCoは所得控除による節税効果が高いため、年収別に見た節税効果を考えてみましょう。
前提条件として、独身で社会保険料は年収の15%、所得控除(基礎控除)、社会保険料控除のみとします。
年収が400万円から約441万円未満の場合、所得税率は5%で、年間24万円の掛金を積み立てると年間36,000円の節税効果があります。年収が約441万円から約649万円未満の場合、所得税率は10%で、年間48,000円の節税効果があります。年収が約650万円から1000万円の場合、所得税率は20%で、年間72,000円の節税効果があります。
このように所得税率が高いほど、iDeCoの節税効果も大きくなります。
また、iDeCoの節税効果は、住民税にも影響を与えます。住民税率は一律10%であるため、iDeCoの掛金全額が所得控除の対象となり、住民税も軽減されます。したがって、所得税と住民税を合わせた節税効果を考えると、iDeCoの利用価値は非常に高いと言えます。
例えば年収800万円の方がiDeCoに毎月2万円、年間24万円を積み立てると、所得税と住民税合わせて年間約7万2000円の節税効果が得られます。この節税効果は、長期的な資産形成に大きなメリットをもたらします。
さらにiDeCoの節税効果は複利の効果を高める役割も果たします。節税によって得られた資金を再投資することで、複利効果が加速し、長期的に見て大きなリターンを生むことができます。
例えば節税によって年間7万2000円の追加資金が得られる場合、この資金を新たな投資に回すことで、さらに大きな資産形成が期待できます。
新NISAとiDeCoの投資割合
毎月の投資金額に余裕がある場合、iDeCoと新NISAをうまく組み合わせて活用するのがベストです。例えば、毎月5万円以上投資できる場合、iDeCoの掛金上限まで積み立て、残りを新NISAで投資するのが良いでしょう。
具体的には、企業年金のないビジネスパーソンが毎月5万円投資できるなら、2万3000円をiDeCo、残りの2万7000円を新NISAで投資する形です。これにより、iDeCoの節税効果と新NISAの投資自由度を両立させることができます。
また毎月3万円程度投資できる場合、所得税率が20%以上であれば、iDeCoを優先して残りを新NISAで投資するのが効率的です。所得税率が10%以下の場合は、iDeCoと新NISAをバランス良く活用する方法もあります。例えば1万円をiDeCoに、2万円を新NISAに投資することで、節税効果と投資の自由度を両立させることができます。
新NISAとiDeCo、どちらを選ぶべきか
新NISAとiDeCoの選択は、投資目的やライフスタイルによって異なります。少額から投資を始めたい方や、老後資金以外の用途に使いたい方、個別株に投資したい方、60歳以上で長期投資を考えている方には新NISAが向いています。新NISAは多くの金融機関で1000円、ネット証券では100円から始められるため、投資初心者にも適しています。さらに、資産を運用しながら取り崩すことができるため、柔軟な資金管理が可能です。
一方、iDeCoは長期的な資産形成に特化しており、60歳まで資金を引き出せないという制約があるものの、節税効果を最大限に活用することができます。老後資金を計画的に貯めたい方や、所得控除による節税効果を重視する方、貯蓄が苦手な方にはiDeCoが最適です。
なぜなら、iDeCoを利用することで強制的に老後資金を積み立てることができるので、長期的な資産形成を支援します。
またiDeCoは資産をコツコツと積み立てるため、リスク分散の観点でも優れています。
投資信託を選ぶ際に、国内株式、海外株式、債券型など複数の資産クラスに分散投資することで、リスクを抑えつつリターンを狙うことができます。これにより、長期的な資産形成を安定して行うことができます。
新NISAかiDeCoかで迷ったら、今回の内容を参考に自分に合った制度を選んでみましょう。
また資金に余裕がある場合は、新NISAとiDeCoを併用して、より効果的に資産を増やしていくことをおすすめします。両制度を使い分けて、将来に備えた資産形成を進めることが理想的です。
おわりに
新NISAやiDeCoを活用する際は定期的な見直しを行うことも大切です。市場の状況やライフイベントの変化に応じて、投資方針を柔軟に見直すことで、より効果的な資産形成が可能となります。定期的にポートフォリオをチェックし、必要に応じてリバランスを行うことで、リスクを抑えつつ資産形成を育むことが出来るはずです。
文/鈴木林太郎