若い世代はあえて中古品を選択
▲アウトドア アスリートの愛用ギアを展示。ギアとともに歩んだ記憶がしたためられていて、傷や修理跡には物語が刻まれていることがよくわかる(Photo Credit:©yutakono)
「Worn Wearポップアップストア」にはどのような人が訪れているのだろうか?
ストアマネージャーの成田さんによると、思いのほか若い世代が多いという。
渋谷駅・原宿駅、どちらからでも徒歩10分圏内という土地柄もあるが、理由のひとつにあげられるのがリバイバル人気。
30~40年前の映画や音楽に興味を持ち、その時代の空気感を感じる古着を探す人が増えている。彼らにとって80年代・90年代”風”よりも本当にその時代に生まれたモノを手にしたくなるのは当然のこと。
▲アップサイクル製品のコーナー(Photo Credit:©yutakono)
▲ジャケットのフードをバッグにリメイク。左は回収した製品の一部を縫い付けてデザインを変えたショーツ
古着に抵抗のない若い世代にとって、「Worn Wearポップアップストア」は良質な中古品が手に入るし、古着でありながら保証がつく。
リメイク派ならアップサイクル品(リクラフテッド)コーナーは絶好のヒント集だ。
一方、回収・買い取りでウェアを持ち込むのは大人世代。
「店頭スタッフはみなさんの話を聞き、ウェアに刻まれたストーリーを引き継ぐという役割があります。
ウェアを買い取る専門店はほかにもありますが、愛着ある製品を知らない人の手に渡るのが不安、わかっている人に使ってほしいと持ってこられるカスタマーが多いことがわかりました」(成田さん)
なかには話をしているうちに「やっぱりまだ使おう」と持ちかえる人もいるとのこと。
丈夫で流行廃りのないデザインなら何年も着続けられる。そのうちに身体に馴染み、傷や汚れすら愛おしくなるのだから土壇場で手放したくなるのも当然だ。
ちなみにベビー、キッズウェアもあるが数は少ない。
これは親戚や友人など身近な人にお下がりする習慣が根付いているためと考えられる。
であれば、Worn Wearの活動を続け、広がれば、大人向けのウェアも友人や子世代に託すのが当たり前の習慣となるのも決して絵空事ではない。
ていねいに扱おう
最後に、気に入ったウェアをできるだけ長く着続けるためのヒントを教えてもらった。
ロジャースさん、成田さんが声をそろえたのは「ていねいに扱う」。
アウトドアウェアなのだからラフに扱っても問題ないと思えるが、じつは野外活動よりもダメージが大きいのが洗濯なのだ。
ウェアは裏返しにしてネットに入れて洗濯する。これだけでも結果はずいぶん変わる。
また、ファスナーの不具合も予防できるトラブルだ。
ファスナーの開具(端っこのかみ合わせるきっかけとなる部分)を合わせた後、片手で引き手を持ち勢いよく引き上げるクセがある人は要注意。
開具を合わせた後も片手をファスナーに添えたまま、ゆっくり引き上げることで大概のファスナー破損を防げるそうだ。
ちなみに圧着や防水加工の剥がれは修理対象外。
アウトドアウェアは過酷な環境にいる人を守ることが第一。加工剥がれを補修しても、新品同様の機能を保証できないためだ。
もっとも加工が剥がれても普段着とするには問題ないし、裁縫好きであれば大胆にリメイクするのもアリ。
当初、「Worn Wear ポップアップストア」は8月4日までの予定だったが、好評につきお盆期間をふくむ8月19日まで延長されることが決まった。
メンテナンスや手持ちのウェアの寿命を伸ばすチャンス。長く着続けるかっこよさに触れてほしい。
【問】パタゴニア
取材・文/大森弘恵