個性強めの組み合わせが見事に調和!
そしていよいよ実食。ソーセージの肉汁を含んだしょっぱさとトマトケチャップの甘味。そこに香辛料が効いたカレーパウンダーのアクセント。一個目を口に含んだ直後に頭に浮かんだ言葉は「なるほど、この手があったか!」。みんな大好きではあるけどもちょっと子どもっぽい印象があるソーセージとトマトケチャップに、ちょっと大人の匂いをプラス。とはいえ子どもたちも喜んで食べると思う。
とはいえ少々古臭い表現だが「パンチが効いた」というほどカレー粉が自己主張しているわけではない。ケチャップと手に手をとりあいながら優雅なワルツのステップを踏んでいる。そんな印象である。「団結力」のゲルマン魂というか、フォルクスワーゲン、メルセデス・ベンツ、アウディ、ポルシェを生んだヨーロッパ屈指の工業国ドイツの「英知」というべきか。
さらにいえば「ケチャップ+カレー粉」の組み合わせを発見したドイツ人は、「とんかつソースまたはお好み焼きソースまたはたこ焼きソース+マヨネーズ」のカップリングを見出した日本人とともに称賛されるべきであろう。
フライドポテトとともに提供される。
そしてまた欧米のB級グルメの常としてフライドポテトとピッタリなのだ、これが。今回は追加メニューのフライドオニオンを頼まなかったが、それとも絶妙にあうはず。ちなみに日本ではフライドポテトにつけるディップ的なものはトマトケチャップ一択に近いと思うが、メニューにもあるとおりマヨネーズ派も多い模様。
そしてもう一つ。気になるのはビールにあうかだが、これもピッタリだった。
というか合わないはずがない。日本のビアホールやビアガーデンでも人気を呼びそう。
つまりランチでもディナーでも、そしてつまみにもいい。フライドポテトをつけなかったらおやつでもありかも。まさに大阪のソウルフード「たこ焼き」のようなユーティリティーフードなのである。
「進化形」のカリーヴルストも食べてみた
さて後日、同じシュトゥットガルトにあるポルシェ博物館のカフェテリアでカリーヴルストを頼んだ。こちらはオーソドックスではない「進化形」。トマトケチャップをソーセージにかけ、その上からスモークしたマヨネーズ、刻んだキュウリのピクルス、フライドオニオンをトッピング。さらにパープルカレー(ビートルートなど紫色の素材を加えたカレー粉の模様)をふりかけたもの。
マヨネーズのまろやかさ、キュウリのピクルスのシャキシャキとフライドオニオンのサクサクした歯ごたえが加わっている
これはこれでありだと思った。一般的なカリーヴルストが「ヴァイオリンとピアノの二重奏」だとすると、こちらは「オーケストラが奏でる交響曲」。優劣をつけるものではなく、どちらも別の楽しみだ。
さてこの「カリーヴルスト」はどこで食べられるのか。B級グルメなので高級レストランではあまり見当たらない。筆者が食べたのはもっとお気軽なファミレス的というかビアホール的な店やカフェテリア。
それから「テイクアウト専門店」的な店もある。
ポルシェ博物館のカフェテリア
ちなみに日本でもケンコーマヨネーズ株式会社からカリーヴルストにヒントを得たという「ジャーマンカレーケチャップ」という商品が発売されている。普通にケチャップとカレー粉で再現してみるのもいいが、この商品を試してみるのもいいかもしれない。
世界はうまいで満ちている。
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ドイツ観光局
http://www.germany.travel/
文/柳沢有紀夫
世界約115ヵ国350名の会員を擁する現地在住日本人ライター集団「海外書き人クラブ」の創設者兼お世話係。『値段から世界が見える』(朝日新書)などのお堅い本から、『日本語でどづぞ』(中経の文庫)などのお笑いまで著書多数。オーストラリア在住