「絶品B級グルメ」とか「ソウルフード」と呼ばれるものは日本全国にある。で、みなさんはこう考えたことはないだろうか。「日本各地にあるんだったら世界各地にも当然B級だけど超絶うまいものがあるんじゃないか?」と。
というわけで世界100ヵ国以上の現地在住日本人ライターたちの集まり「海外書き人クラブ」が、居住国や旅先で出会った「絶品ソウルフード」を大紹介するシリーズ。第5回はソーセージ王国ドイツから「カリーヴルスト」をお届けする。
みんな大好きソーセージに、みんな大好きカレーを追加!
ドイツがどれほどソーセージ王国なのかというと、なんと1500種類もあるのだとか。
そのわりにはホテルの朝食バイキングでソーセージの種類が少ないなあと思っていたら「このサラミみたいに見えるのもソーセージですよ」と言われたりする。
製造するときに加熱せず、食べるときにも茹でたり熱したりしないでそのまま食べる「ローヴルスト」だ。「ロー」は「生」、「ヴルスト」は「ソーセージ」の意味である。
ドイツの加工肉とチーズの盛り合わせ。もはやどれがソーセージでどれがサラミなのか区別がつかない。
さて「カリーヴルスト」はどれくらいB級なのか。
「カリー」とはドイツ語で「カレー」のこと。そして「ヴルスト」はソーセージ。そう、ソーセージにトマトケチャップをかけるという王道の食べ方に、粒入りマスタードなどではなくなんと「カレーパウダー」でアクセントをつけてみましたという料理なのだ。
カレーパウダーの使い方は「ソーセージとトマトケチャップの上から振りかける」または「トマトケチャップと和えたものをソーセージの上にかける」の両パターンがある。
「ソーセージとトマトケチャップ」も「カレー」も子どもから大人まで、ほぼ万人に愛される食べもの。
だがおいしいものを合わせればおいしくなるとは限らない。お互いの長所を殺しあってしまう可能性もなきにしあらず……というかかなり高い。今回の組み合わせはドイツが生んだ「楽聖」ことベートーヴェンの交響曲のように素晴らしきハーモニーを奏でるのか。はたまた不協和音に終わってしまうのか。
なんと一つのレストランで3種類のカリーヴルスト
実食してみた。場所はドイツ第7の都市で人口60万人強のシュトゥットガルト。シュロスプラッツ・シュトゥットガルト(宮殿広場。ただし訪れた日はサッカーのユーロ2024直前でパブリックビューイングのための仮設の塀が築かれていて入れず)の前の某レストランだ。
メニューを見ると3種類あるが「Oberlander」はドイツで人気の白いソーセージ
「Rote Wurst」は一般的な茶色いポークソーセージ(ちなみにRoteとは「赤」の意味)。「Rindswurst」はビーフソーセージ。というわけで一般的な「Rote Wurst」で試してみることにした。
カリーヴルストだけで3種類用意されている。さすがはドイツのソウルフード。
メニュー右上にある「mit Pommees」は「with Potetoes」の意味で「フライドポテト付き」。「gebratenen Zwiebeln」は「フライドオニオン」で、1ユーロ(約171円。2024年6月現在)で追加できる。単品で提供されることもあるが、このメニューにある通りフライドポテトとともに食べるのが一般的なようだ。
注文からほどなくしてカリーヴルストが届いた。このすぐに提供されるところもB級グルメのいいところだ。
色合い的にも食欲をそそる。
ここのカリーヴルストは「ソーセージとトマトケチャップの上からカレー粉を振りかける」ほうのパターン。メニューの写真ではソーセージ一本まるごとそのままだったが、一口サイズにカットされて提供。ネットで画像検索してみると、どうやらカットするほうが一般的なようだ。つまようじを幅広くしたようなものがついてきた。これで刺して食べるらしい。
つまようじというかミニナイフで刺す。